最近では、共働きが増え、家事、育児だけではなく、両親が毎日忙しくしていることも多いと思います。
共働きの場合に、夫婦で家事育児を分担していれば良いのですが、いまだに家事、育児は母親の仕事になっている場合が多いですよね。
仕事の上に、家事、育児まで。
これでは毎日母親はとても大変でストレスが溜まってしまいます。
平成30年度の児童相談所による児童虐待相談対応件数は15万9580件に上り、過去最多を更新しました(前年度より2万6072件の増加)。
対応件数の内訳は、心理的虐待88,389 (55.3%)、身体的虐待40,256 (25.2%)、ネグレクト29,474 (18.4%)、性的虐待1,731 (1.1%)となっています。
この数字を見ただけでも、いかに現在の日本で虐待の問題が深刻であるかがわかるかと思います。
カウンセリングでも、お子さんへの怒りがコントロールできず、暴言を吐いてしまったり、ついつい手をあげてしまい、虐待や子どもへの影響を心配される方の相談がとても増えてきています。
今回は、そのような問題で悩む方に向けてブログを書いてみますので、ぜひ読んでみてください。
まず、「子どもへの怒りがコントロールできずに、キレて子どもを傷つけてしまう」という悩みを抱える女性の相談を紹介します。
やめたいのに子どもにキレてしまう。そして、落ち込むの繰り返し…
子どもにすぐにキレて怒鳴ってしまうのを治したいです。
子どもは二人いるんですが、特に小学校1年の上の子に対して、自分でもコントロールできないくらいに怒ってしまいます。
苦しいのは、子どものことを可愛く思えないというか、憎しみみたいな感情が強くなるというか
私って、自分の子どもを好きじゃないのかな、とか考えるとすごく怖くなっちゃって。
言ってるのに早く着替えないし、ご飯をいつまでもダラダラ食べてるし、宿題ができないとワンワン泣き出すし
まだ下が3才で私だっていっぱいいっぱいなのに、毎日毎日グズグズされちゃうから、もう嫌になっちゃって。
「こんなにママのことを困らせて!本当に悪い子ね!ママのこと嫌いなんでしょ!!!!」
今朝なんて私がバタバタしてるときにお茶をこぼしたから、こんな風に怒鳴っちゃいました。
もちろんわざとこぼしたんじゃないことくらいわかってますよ。
でも、抑えられなくて。
子どもはすごく泣いてましたけど、そのまま学校に行かせました。
毎回、怒った後に、私って最低だなと自分を責めます。
夫にも「そんなに怒ることないだろ」と責められ、その通りだと思います。
そんな日は、「ごめんね。これからは気をつけるね」と言って子どもが寝る前に抱きしめて、許してもらってますが・・・
どうやったらキレない、怒鳴らないようになれるんでしょうか。
ママ友に相談すると「私だって怒るよ」と言うけど、いくらなんでも私のようなキレ方はしないはずだし、やっぱりみんな私なんかよりちゃんとしてると思います。
私だけ劣っているようです。
夫にも迷惑をかけていて、辛いです。
どうしたらいいんでしょうか。
こんな風に、子どもに対して怒りをコントロールできずに、日常的にキレてしまう。
その度に強い罪悪感に襲われ、自分を責めてはさらに落ち込み、治したいと思いながらも繰り返してしまう。
こんな悩みを抱える方にこれまで多くお会いしてきましたが、皆さん、初めて相談に訪れた時に相当に追いつめられています。
疲弊し、苦しみ、自分を責め、でもどうにもできずに途方に暮れる。
本当に辛く深刻なことだと思います。
「私は子どものことを好きじゃないんでしょうか。私は母親失格ですよね?」
涙を流しながらそんな風に語る方を見ると、こちらも本当に胸が詰まります。
ひとつだけ言えることは、本当に皆さんがんばっているんですよね。
母親として、妻として、仕事をしている方は一生懸命に働いています。
あなたもそうです。
お子さんのために、母親としてがんばっています。
子どもに寂しい思いをさせないように、いつでも受け止めてあげられる母親でありたい。
お子さんのために、良き親でありたい。
そうですよね。
あなたはとても優しく、家族思いの方だと思います。
だからこそ、子どもを傷つけてしまう自分が辛くて辛くて、情けなくて、許せなくて。
そんな自分に、とても傷ついているのだと感じます。
今日は、そんなあなたが今の辛い状態から抜け出すために、私の感じることを話します。
礼儀正しく真面目なお母さんが、子どもに激しくキレてしまう理由
まず、子どもにキレてしまうことで悩んでいる方に詳しくお話を伺うと、皆さん、だれかれ構わず怒りをぶつけているわけではないのです。
むしろ、とても礼儀正しいし、細かな気遣いのできる優しい方が多いというのが私の印象です。
職場では、不満なことや自分の意見をそんなに主張しない。
夫に腹が立つことがあっても、「言っても仕方ないし」と諦めて、あまり喧嘩にもならない。
「私さえ我慢して収まるなら」と自分の気持ちを押し殺して、人間関係を円滑にすることを優先する。
あなたにもそういう傾向があるのではないでしょうか。
そんな優しくて真面目な人が、どうしてお子さんにはキレてしまうのか。
ここを説明していきます。
目の前の相手との人間関係を常に優先しやすいあなたは、多くの場面において、自分の気持ちを後回しにしてしまうのではないでしょうか。
例えば、本当は仕事を断りたい。
夫に手伝ってほしい。
でも、そんな気持ちより、「言ったって仕方ないしな」「私さえ我慢して済むならそうしよう」と考えやすい。
これを日常的にやっているわけですから、当然ですが抱えるストレスは慢性的に強くなります。
辛さ、イライラ、不満、怒り、悲しみ、不全感、無力感
こんなネガティブな感情を常に抱えた状態になっていきます。
そんなストレスを趣味や楽しみで発散できれば一番良いのでしょうが、小さいお子さんを抱えるママには、ストレス解消に当てるような時間も余裕もありません。
子どもが生まれる前は、仕事で嫌なことがあれば同僚と飲みに行ったし、週末は好きな買い物を楽しんだ。
元々がんばりすぎる性格だから、息抜きの時間を大事にしていた。
一人でのんびりお風呂に入るのも好きだった。
でも今は、仕事が終われば急いで保育園に子どもを迎えに行き、買い物をして、帰ってご飯を作って、子どもの宿題を見て、ご飯を食べさせて、明日の学校や保育園の準備をして、子どもをお風呂に入れて、歯磨きさせて、寝かせて、それから食器洗いに洗濯。
その間、夫が帰ってくれば夫の夕食を温めて出して、食べ終わったら片づけて。
子どもがぐずったり、ご飯をこぼしたり、兄弟喧嘩を始めたりすれば、その度に時間をとられて。
やっと寝てくれたと思えば「寝れない」なんて言って起きてきて。
夫はそんな時に「早く寝なさい」と子どもに言うんだけど、言うだけで自分が寝かしつけるわけではないし。
なんでも私!
ぜんぶ私!
子どもも夫も、何かあれば、いつも私…
本当に、私ばっかり!
今のあなたの日常を想像して書いてみましたが、このようにほっと一息つける時間もほとんどなく、日々目の前の家事や育児、仕事に奔走しているのではないでしょうか。
そうすると、あなたに日々蓄積する辛さやイライラなどのネガティブな感情。
これらの感情はどうなると思いますか?
これを考えてみてください。
キーワードは「怒りは強いものから弱いものに向かいやすい」です。
怒りやイライラって、ついついぶつけても大丈夫な相手に向けてしまわないでしょうか。
特に人間関係の摩擦を避ける傾向が顕著な人は、言いやすい、ぶつけやすい相手に怒りが強く向かいやすいのです。
つまり
あなたがお子さんにいつもキレて怒鳴ってしまうのは、「あなたがお子さんを愛していないから」ではない。
あなたのやり場のない強い怒りや悲しみ。
これが、あなたにとって怒りをぶつけやすい存在であるお子さんに、ストレートに向かってしまっているのです。
衝動的にキレてしまう行為は、一時的にはスッキリするかもしれませんが、結局は自分が傷つきます。
やめたいのにやめられない自分のことを惨めに感じます。
蓄積する惨めさは更なる怒りになり、その怒りが再び子どもに向かう。
まさに悪循環に陥っているのです。
このような苦しい悪循環の中、あなたは本当に頑張っていると思います。
だからこそ、この悪循環から抜け出すために、あなたに試してほしい取り組みについてお話ししていきます。
取り組み①「カウンセリングで怒りを安全に処理する」
カウンセリングを受けることで、「明らかに子どもにキレる回数が減った」「私が最近怒らないから、子どもが安定しているように感じます」と語る方がとても多いです。
以前、私は小学校でカウンセリングをしていましたが、親がカウンセリングを受けだすと、担任の先生からも「●●君、最近すごく落ち着きましたよ」とよく言われました。
カウンセリングで自分の話をすることは、あなたが抑圧している強い感情を安全に解放することにつながります。
つまり、怒りや悲しみをお子さんにぶつけることで処理するのではなく、自分で癒していく生活に変えていくのです。
今は感情のやり場がないだけに、できるだけ感じない、考えないようにするしか方法がないですよね。
その感情に蓋をしてそのまま放っておくのではなく、カウンセリングの場で蓋を少しずつ開き、自分の気持ちを点検していくのです。
これまで抑圧していた感情が強ければ強いほど、カウンセリングを初めた当初は感情が出すぎて、終わった後に疲れてしまうこともありますが、2回、3回と続けていく内に負担は減っていきますよ。
「とてもイライラするとか、嫌だったこととか、あと三日我慢すればカウンセリングで話せるぞ!と思えると、ちゃんとイライラを感じながらもそれなりに過ごせますね」
こんな風に、感情を抑圧せず抱えられるようになれば、今のように衝動的に子どもにキレることは減っていくことが多いのです。
カウンセリングでなくても、あなたが安全に自分の話ができる場があればいいと思いますが、実際のところなかなかそういうい場はないのではないでしょうか。
母親にグチを言っても「私の頃なんてもっと大変だった」なんて言われて余計にイライラするし、何でも話せる友達はいるけど、電話して毎回自分の話を聴いてもらうなんて気が引けるし。
子育て支援センターでやっている母親の集まりなどを活用できればいいですが、そういう場が苦手で、気を遣いすぎて逆に疲れてしまうという人もいます。
だからこそ、自分の話が安全にできる場としてカウンセリングは有効なのです。
「今すぐにこの苦しみから抜け出したい」という方には、迷わずカウンセリングを受けることをお勧めしたいなと思います。
※参考記事
取り組み②「あなたの怒りの正体と向き合ってみる」
さて、次に私があなたに伝えたいこと。
それは、「あなたの怒りの正体」と向き合ってみることの大切さです。
「怒りは強いものから弱いものに向かう」という話から、あなたが気づいたことや、何か考えたことはありませんか。
あなたがお子さんに向けている怒りは、本当は誰に対して、または何に対しての怒りなのでしょうか。
あなたが本当に怒っているのは、悲しんでいるのは、誰に対してなのでしょうか。
まさにここに問題の本質が潜んでいます。
例えば、あなたは夫との関係でいつも辛い思いばかりしているということはありませんか?
または、DVやモラハラを受けながらも、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいるということはないでしょうか。
夫のアルコールや借金などの問題で悩んでいませんでしょうか。
「夫にもっと手伝ってほしくてお願いしても、話をちゃんと聴いてくれないんです。いつも上から目線で、論理で自分の正当性を主張して、最後は『いい?わかる?』と、まるで子供に言い聞かせるように私に言うんです。そうやって夫に論理で言われると私は弱くて。反論できなくて、もう何を言っても仕方ないなと思って諦めます」
「姑からずっと嫌がらせを受けているんですが、夫に相談しても『うまくやってくれ』『おれは忙しいんだ』しか言わないので、私が我慢するしかないんだろうなと思ってます」
「夫は帰ってくるといつもお酒を飲んで、酔って嫌なことばかり言うので、娘は怖がって夫に寄り付かないんです。お酒のことで夫とは時々喧嘩になります。でも、物を投げたり、物凄く大きな声で怒鳴って、本当に大変で…」
このように、夫婦関係で悩みを抱えながらも、その問題にうまく対処できず、 慢性的に強い怒りや悲しみが蓄積している。
そして、その怒りや悲しみが子どもに向かう。
このような構造で問題が長期化している方が多いのも、また事実です。
だから、「子どもにキレてしまうのを治したい」と相談に来る方の多くが、カウンセリングを進めていくと、相談内容が夫との関係にシフトしていくのです。
また、夫との関係だけでなく、幼少期の家庭環境から深刻なトラウマを抱えている方にも多く出会います。
「子どもが私に甘えて何でも求めてくる姿を見ると、『私なんて何もしてもらえなかったのに!甘えるな!』と物凄い怒りがこみ上げてくるんです」
「子どもに怒りをぶつける自分が、母親が私にしていたこととそのままかぶって、本当に辛いんです。苦しくて苦しくて、涙が止まらなくて…」
あなたが子どもの頃に親に傷つけられ、その怒りが今も癒されずにしっかり残っているとしたら、怒りのコントロールがうまくできないのも無理はありません。
自分が与えられなかった愛情を求める子どもへの怒り
そして、自分がされたことと同じように子どもを傷つける自分への絶望
本当に受け入れ難いことで、怖くて耐えられない、と感じるのは無理もないことだと私は感じます。
このようなトラウマが、お子さんに向かう怒りの正体であることも、全く珍しいことではないのです。
※参考記事
▶「母親を許せない」と親への憎しみが消えずに責めてしまうことに疲れたあなたに知ってほしい、「母との距離のとり方」と「心の傷の扱い方」
最後にあなたに伝えたい、大切な話。
ここまで読んで頂き、「まさに私のことだ!」と思ったあなたにお勧めしたいです。
あなたに今、必要だと思うもの。
それは、「きちんと人を頼る」ということではないでしょうか。
怒りのコントロールが少しでもできるようになるために
「どうせ言ったって何も変わらない」「私が我慢するしかない」と諦めている夫との関係を少しでも改善できるように
幼少期の家庭環境などで傷ついた心を少しでも癒していけるように
解決に向けて相談をしてみることです。
あなたは、今まで多くの場面において、悩みや辛いことを一人で抱えて、頑張って生きてきたのではないでしょうか。
「こんなことを相談するなんて、自分は弱くて情けない」
「他の人がやってるように、一人で解決しないと!自立しないと!」
そう思うことが日常になっていませんか。
もしそうであれば、一度立ち止まって、その考えをまずは見直してみませんか。
あなたは、もう十分に頑張ってきました。
だからこそ
困った時にきちんと人を頼り、人に助けを求めて生きてみる。
色々な人に支えられながら、自分で考えて、できることをやってみる。
適切に人を頼れるようになる。
こんな生き方を身に着けてみるのも、ひとつの解決策だと思います。
お子さんのためにも、あなた自身のためにも、変わっていくための取り組みをぜひカウンセリングでお手伝いさせてください。
いつでもお待ちしています。
※参考記事
▶「これって過干渉?」子どもへの過干渉をやめたいけどやめられない方に知ってほしいこと。「過干渉になる原因」と「子どもへの影響」とは。
▶「子どもの気持ちに寄り添うってどういうこと?」誤解されやすい「気持ちに寄り添う」の本当の意味と、共感力を養う方法。
▶「うちの子ってゲーム依存症?発達障害?」いくら叱ってもゲームをやめない子どもの病気を疑う前に試してほしい「親子の境界線の引き方」