「もっと私を必要としてほしい」「嫌われたくない」「人からどう思われるのかが怖い」

 

「慢性的に体調が悪い」「眠れない」「浪費がやめられない」など、カウンセリングで様々な相談を受けていると、背景に「共依存」の問題を抱えている方に多く出会います。

 

あなたは、仕事や恋愛、家族や友人との関係において、自分よりも相手の気持ちを優先しすぎてしまい、「仕事を断れない」「思っていることを伝えられない」などの悩みを抱えていませんか?

 

今日は久々に大学の同級生の飲み会があるから、どうしても早く帰りたい。

 

みんなと会ってたくさん話したい。

 

定時で帰るために、昨日多めに残業して雑務はこなしておいた。

 

そんなにうまくいくとも思わないから、多少残業になるのは覚悟している。

 

それでも、なんとか19時には職場を出たい。

 

17時15分。

 

「今日はなんとか帰れそうかな」

 

そう思っていたのも束の間、いつものように職場がバタバタしはじめる。

 

「早く帰らなきゃ」「今日は帰るんだ!」

 

今日は特に強く誓って挑んだあなたですが、ここで隣の席の先輩から声をかけられます。

 

「ねえ、これやってもらうのって、無理だよね?実は今日、実家からお母さんが来てるの。美味しいパスタのお店を19時半に予約しててさ。一緒に食べる約束してるんだ」

 

「だからどうしても帰らないといけなくて。今度おごるから。ダメ?一生のお願い!」

 

最悪のタイミングで、仕事を頼まれてしまった。

 

確かに、実家のお母さんが来ているなら、早く帰らせてあげたい。

 

先輩だっていつも疲れてるし。

 

お世話になってるし。

 

でも、引き受けたらやばい。

 

相当急がないと19時に帰れない。

 

断りたい。

ただ、先輩の困った顔を見ていると、どうしてもできない。

 

「今日は無理なんです。すいません」の一言が言えない。

 

言いたい。

 

断りたい。

 

でも、どうしても言えない。

 

結局、あなたは先輩に笑顔で応じます。

 

「わかりました。やっておきますね。早く帰ってお母さんと楽しんでくださいね」

 

こんなことの繰り返し。

 

他にもたくさんある。

 

先月の同期との飲み会のお店探し

 

会議の議事録

 

友達とのコンサートのチケット取り

 

なんだかわからないけど、誰がやってもいいようなことを私がやっている。

 

おまけに、定職になかなかつかない彼氏に貸したお金もなかなか返ってこない。

 

返してくれないどころか、昨日も「1万円貸して」と言われたばかりだ。

 

私だって生活は楽じゃない。

 

お金返してよ。

 

ちゃんと働いてよ。

 

友達からも「もういい加減別れなよ」と何度も言われている。 

 

わかってるよ、私だって。

 

でも

 

なんでだろう。

  

彼から頼られると、なんだか世話をしてあげたくなっちゃう。

  

ダメだとわかっててもお金を貸しちゃう。

  

なんでもそうだ。

  

全てがそうだ。

  

私を必要としてほしい。

  

嫌われたくない。 

  

相手にどう思われるのかが怖い。

  

言えない。

  

断れない。

  

振り返ると、ずっとずっと、ずーっと

  

こんなことを繰り返している。


人から「必要とされる必要がある」共依存とは?

 

共依存を例え話で説明します。 

 

A君とB君が、「毎日2人で井戸から水をバケツ10杯分汲んできてほしい。そしたら千円ずつあげるよ」と仕事を任されたとします。

 

そしたら、1人5杯ずつ水を汲めばちょうどいいですよね。A君B君ともに「一日5杯水を汲む」という役割と責任を背負うわけです。

 

ただ、ここでB君が共依存だったらどうなるか。

 

B君が自分に自信がなくて、「A君に少しでも好かれたい。僕がいてくれて良かったと思ってほしい」と強く思っていたとしたら。

 

B君は「A君に必要とされるための状況」をわざわざ作り出すことになります。

 

B君は、A君の水まで運ぶようになる。

 

1日5杯のはずが、6杯運び、一か月後には7杯に増える。

 

初めは「悪いからいいよ。僕自分でやるから」なんて言っていたA君ですが、いつの間にかB君に多く運んでもらうのが当たり前になります。

 

もともと5杯運ぶ力があったA君。

 

でも今は、3杯しか水が運べなくなりました。

 

たまにB君が疲れて6杯しか水が運べないと、いつもより1杯多く水を運ぶことになったA君は、明るさまに不満そうな顔をするようになりました。

 

B君は、そんな不満そうなA君を見ると、とにかく不安で不安で仕方がなくなります。

 

だから、好かれるために今日もがんばります。

 

A君が嬉しそうな顔をしてくれると、とても安心します。

 

でも、B君は時々わからなくなります。

 

自分がA君に好かれることが「心から望むこと」なのか。

 

自分は本当はどうしたいのか・・・

 

どんな自分でありたいのか。

 

これがどうしてもわからないのです。 

この話を聴いて、共依存傾向にある方は「B君はまさに私だ!」と思うのではないでしょうか。

 

A君に必要とされたくて、A君の役割と責任を背負うB君。

 

そして、そんなB君に依存し、自分の役割と責任を果たさず、本来持っていた力を失うA君。

 

「共依存」とは、自分の存在意義を見出そうとして、過剰に相手の世話をしたり、相手の責任や役割を背負ったりして、「相手に必要とされる状況を作り出す」関係性のことです。

 

共依存には、常に誰かの世話をしていないと落ち着かない「世話焼き依存」や、色々な役割を強迫的に背負う「役割依存」などがあります。

 

共依存の原因として、「自尊心の低さ」を抱えた方が多い傾向にあります。

 

自信が低く、誰かに認めてもらうことで初めて自分の存在意義を確認できる。

 

こんな方は、「相手に必要とされる」ための行動を強迫的に取り続けてしまい、やめたいと思ってもコントロールが難しいのです。

 

また、「親から暴言暴力を受けていた」「深刻ないじめを受けた」などの、いわゆる「トラウマ」も共依存の原因となります。

 

過去に受けた心の傷が癒されていないことで、再び傷つくことを恐れ、人間関係に過剰な警戒や気遣いをしてしまい、結果として共依存から抜け出せなくなります。


こんな問題で困っていませんか?

▢ 上司や同僚の顔色ばかり窺ってしまい、「自分がどうしたいのか」ではなく、「相手にどうしてほしいのか」ばかり考えて行動する。

 

▢ 伝えたいことやお願いしたいことがあっても、どのように伝えていいのかわからず、結局何も言えずに終わる。

 

▢ 仕事が終わって家に帰ると、その日に自分がした発言が相手を嫌な思いにさせたのではないかと心配になる。

 

▢ 喫茶店やコンビニなどで店員に過剰に気遣いをしてしまう。

 

▢ 人前で姿勢を崩してリラックスすることができない。常に良い姿勢をキープしている。

 

▢ 愚痴ばかり言う口が悪い同僚に仕事中によくつかまり、聴きたくもない悪口を長時間聴かされる。

 

▢ 彼氏への嫉妬や束縛がやめられずに嫌がられ、喧嘩ばかりしてしまう。

 

▢ 怒りのコントロールが難しくて、家族や恋人に当たり散らしてしまう。

 

▢ 彼氏ができると、初めはいい人なのに、なぜか段々見下されて暴言や暴力を受けるような関係になる。

 

▢ みんなから「別れた方がいいよ」と言われているほどに彼氏の言動がひどいのに、いつまでも関係を続けてしまう。

 

▢ 沈黙が苦手で、たくさんしゃべったり、相槌をたくさん打ったりして間を埋める。

 

▢ 彼女からすぐにLINEが返ってこないと不安で不安で仕方なくて、さらにLINEを送ったり、電話をかけたりしてしまい、行動のコントロールができない。

 

▢ 仕事で力の抜き方がわからない。なんでも完ぺきにこなそうとしてしまう。

 

▢ 部下に仕事を頼むことが苦手で、管理職なのに現場の仕事を抱え込んでいる。

 

▢  「仕事の評価」が「人間としての自分の価値」に直結する。 

 

▢ 子どもに嫌がられているのに、何かと干渉をやめられない。いつまでも母親として頼ってほしい。

 

▢ PTAや子どもの野球チームの係など、なぜか人よりも多くの役割を背負わされてしまう。


共依存の人に見られる3つの特徴

①相手の感情の責任を背負う

「私がしっかりしないから、同僚は不機嫌になってしまった」

 

「暴力はやめてほしいんだけど、もとはと言えば彼を怒らせたのは私だし…」

 

「上司の言い方は確かにきついしパワハラかもしれないけど、言われていることは間違えていないし、期待に応えられない僕が悪いから」

 

「私が熱を出して家事ができなかったせいで、お母さんを不機嫌にさせてしまった」

 

 自分の行動が相手の感情の原因だと思いこみ、巻き込まれてコントロールを受けやすくなります。

②目の前の相手との人間関係を優先する

「悪いんだけど、明日のシフトの早番と遅番チェンジしてくれない?急に用事ができちゃって。だめ?」

 

「私のことが本当に好きなら、今すぐに迎えに来て」

 

 「家族なら当然お盆は実家に帰ってくるものでしょ。それくらい娘なら当然だ。必ず帰ってきなさい」

 

共依存傾向が強い人は、こんな状況の時に、「自分の気持ち」よりも「目の前の相手との人間関係」を優先します。

 

つまり、「相手との関係を壊さないこと」「相手に嫌われないこと」「相手に必要とされること」が何よりも優先され、自分の気持ちが後回しになるのです。

 

「明日は行きたい勉強会があるから、本当はシフトを変わりたくない」

 

「こんな夜遅くに迎えになんていけないよ。明日は朝早いし、もう寝たいよ」

 

「親に会うと具合が悪くなるから、実家には帰りたくない」

 

本当は断りたい。

 

NOと言いたい。

 

でも、それによって生じる人間関係の摩擦を避けることが優先される。

 

そうやって、自分の気持ちを後回しにすることの積み重ねが、自尊心の低さ(自信のなさ)につながるだけでなく、「自分がどうしたいのか」自体がよくわからなくなってきます。

 

また、「上司や先輩には従順」だけど「部下や後輩には鬼のように厳しい」、「外では優しくニコニコ振る舞う」けど「家では夫や子どもにとことんきつい」など、目の前の相手との人間関係を優先しすぎるあまり、その怒りやストレスが弱いものに向かいやすくなります。

③相手に納得してもらおうとして巻き込まれる。

「別れてほしいと何度も彼にお願いしているんだけど、なかなか納得してくれなくて。それで別れられないの」

 

「何度言っても部下が資料を提出しないし、指示に従おうとしないんです。二人で話しても、いつも回答をあいまいにするし。本当に困りました。今日もこれから話をしてみるつもりです。こんなことを半年以上も繰り返しています」

 

これが共依存の方に常にありがちな人間関係のパターンです。

 

相手に自分の考えや方向性を伝えて、それでも「変わらない相手」に対してこちらの限界を設定することができません。

 

いつまでも相手を変えようとして、尻拭いをし、納得させようとしてコントロールをし合い、怒りや恨みが生じやすくなります。

 

「変わらない相手」に対して自分の限界を示せると、次のように人間関係が変わります。

 

「何度も別れてほしいとお願いしているんだけど、納得してもらえないことはよくわかった。でも、私の気持ちは変わらないから、もう今日で会うのはやめるね」

 

「ずっと指導をしているにも関わらず、今月も資料の提出を守ってもらえませんでした。残念ですが、あなたが行動を変えない限り、その責任はあなた自身が背負うことになります」


カウンセリングによる共依存克服のプロセス

※あくまでも一般的なイメージでありプロセスやゴールは人により様々です。

ステップ1:自己理解を深める

・生まれ育った家族を初め、これまでの人間関係や経験した出来事が、どのように人格形成に関わり、共依存の問題に影響しているのかを整理する。

 

・考え方の癖、トラウマの問題、感情の扱い方やコミュニケーションスキルなどを確認し、共依存に影響を及ぼしている課題を抽出する。

 

・自身の共依存に関係する問題の知識をつける(機能不全家族、アダルトチルドレン、トラウマ、バウンダリー、ストレスマネジメントなど、必要に応じて)。

 

・日常生活の中で考え方の癖やコミュニケーションの特徴を点検し、自分を客観視する。

ステップ2:自尊心に目を向けてみる。

・日常生活の中で、「相手がどうしてほしいか」ではなく「自分自身がどうしたいのか」に目を向け、自分の気持ち(欲求や感情)を確認する。

 

・どんな自分であれば楽なのか。また、どんなことをしている時が楽しくて、どんな人間関係が安心できるのかなど、ポジティブな感情に意識を向ける。

 

・自己理解を深める中で、自分がどのようになりたいのか、どう変わりたいのかを考える。

ステップ3:行動を変えてみる。

・目の前の相手との人間関係よりも、自分の気持ちを大切にした行動を取り入れて、その結果どんな気持ちになったのか、相手との人間関係にどのように影響したのかを点検する。

 

・尻拭いをやめる。 

 

・「お願いする」「断る」など、コミュニケーションのバリエーションを増やし、気持ちを伝えるスキルをつける。

 

・考え方の癖に気づき、修正する。 

 

・自分の気持ちを優先することへの怖れや戸惑いと向き合う。

 

・人間関係で生じる不安や怖れを「今すぐに」安心に変えるために行動するのではなく、不安や怖れと付き合うスキルをつける。

 

・「嬉しい」「楽しい」「安心・安全」「好き」などのポジティブな感情を増やす習慣を持つ。

ステップ4:自尊心を高め、自分の気持ちを大切にした人間関係を構築し、定着させる。

・常に自尊心に意識が向く。

 

・相手の気持ちも、自分の気持ちも大切にした人間関係を築く。

 

・自分の選択や行動に責任を持つ。

 

・不安や怖れなどのネガティブな感情を調節し、上手に付き合う。

 

・性格的な特徴や考え方の癖など、「変えられないもの」は落ち着いて受け入れる。

 

・常に自分を省みて、点検する習慣を持つ。