「初めてカウンセリングを受けてみたら、とにかく疲れて疲れて。次の日までぐったりで大変でした」
「前回のカウンセリングで子どもの頃のことをたくさん話したら、家に帰ってなんだか悲しくなっちゃって一人で泣きました。次の日も気分が重くて、夫から心配されました」
このように、カウンセリングを受けることで疲れてしんどくなってしまい、仕事や生活に影響が出て困った、というお話は珍しいことではありません。
あなたが勇気を振り絞ってカウンセリングを受けてみたのは、言うまでもなく、「少しでも楽になりたいから」「なんとか現状を変えたいと思うから」ですよね。
それなのに、カウンセリングに行くたびにぐったりしてしまったり、嫌な記憶が蘇って苦しい思いをしたら、「このままカウンセリングを続けていいものだろうか」と戸惑うのは当然のことです。
まず、あなたは十分に頑張りました。
だから、カウンセリングを継続することがしんどくなってやめてしまったとしても、決して自分を責めないでくださいね。
そしてもう一つ、私からあなたに伝えたいことがあります。
「カウンセリング後の不調」
その不調は、あなたにとって、とても大切な意味があるのです。
だから、その意味を理解せずにカウンセリングをやめることを決める前に、まずはこのブログを読んで、あなたの不調の意味と一度向き合ってみることをお勧めしたいです。
※ブログ執筆者 山﨑正徳(公認心理師・精神保健福祉士)のプロフィールは こちら
人に話してみて初めて、自分の本当の気持ちに気づくことがある。
カウンセリングにいらっしゃるクライエントさんは、自信が低く、自分の気持ちを周囲に共有することが苦手で、問題を抱え込みやすい方が多い傾向があります。
例えば職場で嫌なことがあっても、「これくらい耐えるのが普通」「こんなことで辛いなんて言ったら、弱い人間だと思われちゃう」なんて考えて、嫌な気持ちをグッと抑えて働きます。
家庭でも友人関係でも我慢をしていることが多かったり、職場で我慢をしすぎている分、家族や恋人にきつく当たってしまったり
自分の感情のコントロールがうまくできず、傷つき、日々生きづらさを感じています。
当然ながら強いストレスが蓄積しますが、解決の方法がわからなければ「できるだけ感じないようにする」しか手立てがなくなります。
苦痛、悲しみ、怒り、不安、憂うつなどの感情が、できるだけ日常に影響しないように、抑圧することが習慣になっていくのです。
ただ、抑圧した感情は、あくまでも「抑圧」であって癒されたわけではありません。
あなたに生じるネガティブな感情を水とすれば、その水は癒されて蒸発したわけではなく、氷になって心の冷凍庫に保存されていると思ってください。
あなたの心には、この冷凍保存された「癒されていない感情」がたくさん眠っているのかもしれません。
カウンセリングでは、当然ながら自分の話をすることになります。
カウンセラーからも「その時どのような気持ちになりましたか?」「今当時の話をしてみて、どんな気持ちになりますか?」「本当はどうしたかったんですか?」など、あなたの内面についての色々な質問を行います。
その度に、あなたは自分の気持ちを点検することになりますよね。
それはつまり、あなたがずっと抱えてきた「冷凍保存されている感情」を、ひとつひとつ点検する作業でもあるのです。
あなたの不調は、これまでに癒されてこなかった「感情の負債」である。
例えば、あなたが過去に上司から受けたパワハラの話をした時に、話をしてみてそこで初めて、自分が思っていた以上にとても悲しんでいたり、上司に強い恐怖を感じていることに気づく。
冷凍保存されていた感情が、取り出して点検してみたら氷山のようになっていて、それが溶け出してあなたに襲い掛かることがあります。
特にカウンセリングを始めたばかりの時は、(個人差はもちろんありますが)これまでの抑圧が強いほどにそれが顕著になりがちです。
その感情に圧倒され、身体に不調として表れたり、眠っていた記憶が蘇り辛くなってしまったり
つまり、カウンセリング後の不調の正体は、これまでに癒されなかったあなたの「感情の負債」であることが多いのです。
「感情の負債」を点検していくことの意味
このような感情の負債が積もり積もっていると、あなたは日常的にその負債に振り回されることになります。
・気分のアップダウンが激しく、急に元気になったり、急に消えたくなるほど落ち込んで動けなくなったりする。
・悲しくないのに涙が出たり、原因不明の過呼吸や動悸が頻繁に起きる。
・お酒や買い物、恋愛などへの依存が強くコントロールできない。
・強いストレスを受けている自覚がないのに、朝になると体が石のように重くて、会社に行けなくなった。
・休みや連休になると熱が出て具合が悪くなる。
癒されない感情が強くなると、それは身体や行動に出やすくなります。
また、些細な刺激で感情が爆発したり、急に落ち込んだりしてコントロールが効かなくなるのです。
これは本当に辛く苦しいことです。
だからこそ、この癒されなかった感情を点検し、癒していく作業が必要になるのです。
ただ、この「感情の負債」を点検していくプロセスには痛みが伴います。
個別の状況に合わせて、慎重に行っていく必要があるのです。
カウンセリングの頻度や扱う話のレベルを相談する。
イメージとしては、炭酸飲料の入ったペットボトルを思いきり振った後に、飲み物が吹き出ないように、ゆっくりと、少しずつ蓋を開けていくようなやり方です。
無理はしなくて良いし、休み休みで大丈夫。
あなたの蓋をゆっくりと、カウンセラーと一緒に緩めてみて、その時の反応を確認して、カウンセリングの進め方を話し合っていきましょう。
最も痛みが強くなやりすいのは、堅く締まった蓋を緩める時です。
だから初めの頃は、カウンセリング後の不調が特に顕著になりやすいのです。
当方のカウンセリングでは、カウンセリングにより明らかに日常生活に強い支障が及び、リスクが高いと判断した方には、
心療内科や精神科を受診してもらい、そこで医師にカウンセリングを継続できる状態であるのかどうかを相談してもらうことをお勧めしたり(もちろん強制はしません!)
カウンセリングの頻度を変えるなど、個々の状況に合わせて対応を検討しております。
また、そこまで痛みの強くならないマイルドな話題を中心にして、カウンセリングを進めていく方もいます。
もちろん、全てクライエント様とお互いの考えを確認して行っていきます。
ちなみに、カウンセリングを受けることにより感情が癒されていき、体調や行動、人間関係に変化が生じたというクライエントさんの感想をブログ記事にしています。
以下にまとめていますので、興味があればぜひ読んでみてください。
◆「普段の感情のアップダウンが穏やかになり、動けないほど落ち込むことがなくなりました」
◆「私はあのままカウンセリングに通っていなかったら、今ごろ生きていたのかな、と思うことがあります」
◆「仕事にいかない、無責任に放り出す、なんてここ数年は考えられなかったのに、嬉しく思って報告したくなり、メールしました」
ここまで読んで、理解いただけましたでしょうか。
もしあなたがカウンセリング後に毎回具合が悪くなり、継続するかどうかを悩んでいるとしたら、まず大切なことは、必ずそのことを担当のカウンセラーに伝えて相談をしてみること。
そして、あなたの不調の意味を確認し、今後についてよく話し合ってみること。
あなたが踏み出したその一歩は、決して無駄ではありません。
ゆっくり、少しずつで大丈夫。
無理をせず、今できることから取り組んでいきましょう。
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