恋愛の問題でのお悩みはカウンセリングで多く受けますが、その中でも「別れをはっきり言わないで、曖昧な関係を続ける恋人」に振り回されて疲弊している方の相談を、昨年から続けて受けています。
「付き合ってる彼氏が別れるかどうかをはっきりさせない」
「彼女にいつまでも曖昧な態度を繰り返され、振り回されて辛い」
「僕は恋愛依存でしょうか?どうしてここまで彼女に執着してしまうのでしょうか…」
あなたも同じような悩みを抱えていないでしょうか。
今回は、別れをはっきりさせずに振り回し、振り回される2人の関係と対応方法について解説したいと思います。
まず、ある男性の相談者の悩みからご覧ください。
※ブログ執筆者 山﨑正徳(公認心理師・精神保健福祉士)のプロフィールは こちら
「別れる」と言ったかと思えば、いつも通りに会いにくるし…一体なんなの?
彼女と交際を初めたのは3年くらい前です。
彼女が職場の新人の時の指導係が僕でした。
お互い共通の趣味があって、すぐに意気投合して。
飲みに行ったり、休みの日も会うようになって。
三ヶ月もしない内に付き合うようになりました。
しばらく順調だったんですが、この一年くらい喧嘩が増えまして。
それで、彼女から「もうこんな関係続けてても仕方ないから、距離を置きたい」「別れた方がいいんだと思う」と言われました。
二ヶ月前です。
僕は別れたくないので、「いやだ」といいました。
でも、実際に喧嘩が増えてるのも事実だし、確かにこのままも良くないのかなというのもあって。
だから、辛いけどちゃんと話した方がいいだろうなと。
そう思って会うんですけど、彼女の態度がその時その時で違うんですよね。
すごく楽しそうに、出会った頃のように楽しい時間が過ごせる時。
あとは、なんだかよそよそしい時。
よそよそしい態度を取られるとこっちも不安なんで、後でLINEで「やっぱり別れたいの?」と聞くと「考えてる」とか返事があって。
それで、こっちも覚悟を決めて次に会うと、彼女から何も話を切り出してこない。
楽しく食事をして、セックスもします。
楽しいから、僕も怖くて本題に入れなくて。
でも、その翌日からまたそっけなかったりして。
それでも誘うとちゃんと来るし
ついこの前の土曜も、彼女は何事もなかったかのように、仕事の愚痴を言ってましたよ。
今ですか?
昨日からLINEを既読スルーされてます…。
おはよう!というスタンプ送っただけなんですが。
これって、一体なんなんですかね?
今まで付き合った人は、こういう時ははっきりと別れを切り出してきて、僕はそこで悲しんで落ち込んで。
別れは辛いですけど、はっきりされないのも本当に苦しくて。
その度に一喜一憂するのにすごく疲れて。
最近食欲もなくて、ほんと、しんどいです。
いつまでこれが続くのか。
いい加減にしろよと言いたいけど、はっきりされるのも怖くて。
初めは親身に相談にのってくれていた友達にも、今は「もう別れろ」と呆れられちゃって…
こんな女性は初めてですよ。
こういう人って、なんなんですか?
僕は一体どうしたらいいんですか?
「曖昧な態度の彼女」と「はっきりさせたいけど怖くてできない自分」
このような問題で相談にいらっしゃる方は、皆さんとても苦しんでいます。
不安、混乱、怒り、苛立ち、落ち込み、悲しみ
喜び、期待、嬉しさ、楽しさ
日々入れ替わり立ち代わりに生じる様々な感情に振り回され、翻弄され。
生活自体が大きな影響を受けます。
あなたは、彼女にはっきりしてほしいと思っています。
別れるなら別れる。
続けるなら続ける。
でも、彼女は一向に曖昧な態度のまま。
本当に苦しいです。
イライラしますよね。
そんな風に、彼女に対する強い不満が募る一方で、あなた自身はもうひとつの別の問題に気づいているのではないでしょうか。
それは
どうして俺って、こんなに彼女に依存してるんだ?
どうして、仕事に集中できないほどに、こんなに彼女に振り回されるんだ?
どうして、彼女にはっきりしろと言えないんだ?
はっきりしないのは彼女なのか?それともおれなのか?
はっきりさせたいけど、はっきりさせたくない。
彼女を失うのが怖い。
でも、はっきりさせたい。
こんな相反する気持ちに振り回され、自分自身がどうしたいのかが定まらない。
そんな葛藤から生じる自分に対する強い苛立ちも、今のあなたをとても苦しめているのです。
そんなあなたが今の苦しみから脱け出すためにまず必要なこと。
それは、今の2人の関係性をよく理解することです。
2人の間で何が起きているのかをまず把握して、その中で「あなたがどうしたいのか」をよく考えてみること。
これがとても大切なことだと思います。
煮え切らない態度をとる彼女の心理。「見捨てられ不安」とは?
このような二人の関係性として、よく見られる一つのパターンを紹介します。(決して全てこれに当てはまるわけではありません)
まず、煮え切らない態度で彼を振り回してしまう彼女の心理状態から説明しますね。
「見捨てられ不安」という言葉をご存じでしょうか。
共依存傾向の方に特徴的な心理状態のひとつで、読んで字の如し、「人から見捨てられるのが怖くて、不安で不安で仕方がない気持ち」です。
見捨てられ不安が強い人は、当然ですが人間関係に依存します。
自分のことを必要としてくれる人、強く求めてくれる人、認めてくれる人が近くにいるととても安心でき、失うことを恐れます。
「恋愛でいつまでも煮え切らない態度をとる人」は、実はこの見捨てられ不安、つまり共依存の問題が背景に潜んでいることは珍しいことではないのです。
自分のことを好きだと言ってくれる人を自ら手放すことは、本人にとってはとても不安で勇気がいるんですよね。
じゃあ、なんで「別れたい」なんていうの?
不安なら今までのように付き合えばいいじゃないか!と思いますよね。
ここがとても大事なポイントです。
共依存の人は、「人から必要とされたい思い」を持つ一方で、それにより行動のコントロールがうまくいかない自分に対し、苦しみも抱えている傾向があります。
不安だから、「自分のことを必要としてほしい!」と思う一方で、「いつまでもこんな自分ではダメだ!」と思う。
「彼を失うことは怖い」と思う一方で、「今のままの関係を続けるもの辛くて苦しい」と思う。
依存したい気持ちだけでなく、自立したい気持ちもちゃんともっていて、そこで揺れている人もいるのです。
つまり、別れるか別れないのかをはっきりさせない彼女は、あなたに「依存したい気持ち」と、そんな「依存的な自分から卒業したい気持ち」の双方で揺れているのかもしれません。
あなたと会えば、あなたに必要とされていることで安心できて、依存的になる。
その時は、これまでのように楽しい時間が過ごせるのでしょう。
一方で、家に帰ると「このままじゃいけない」なんて考えて、一転してそっけない態度になる。
これを、「依存と自立の葛藤」と呼びます。
つまり、今のあなたは、彼女のこの「依存と自立の葛藤」に巻き込まれ、混乱し、疲弊している状態なのではないでしょうか。
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「彼女を変えたい」あなたの思いの強さと、彼女の行動の関係性とは。
じゃあ、どうすればいいの?
どうすれば彼女と元通りの良い関係に戻れるの?
彼女のことが好きなあなたは、当然ながら「彼女を変えよう」としますよね。
見捨てられ不安で苦しむ彼女を救ってあげたいと思う気持ちもあるでしょう。
あなたは本当に優しい方だと思います。
どうするかはもちろんあなたが決めて良いことです。
ただし、ひとつだけ大切なことを押さえてほしいです。
それは、あなたが彼女を変えようとすればするほど、結果的に彼女はあなたに依存し、曖昧な態度を繰り返すことにつながる可能性があります。
「依存」と言っても、残念ながらあなたが期待するような依存ではありません。
どちらかというと、人間性を軽んじられてしまうような、あなたにとって好ましくない依存です。
つまり、彼女にとってあなたは「常に私を思ってくれる人」「私を好きでいてくれる人」になり、あなたの思いに甘えてしまう。
そこに悪意はなくても、彼女にとってあなたは「曖昧な態度をとり続けても大丈夫な人」という位置づけになってしまいやすいのです。
このようにあなたへの依存をエスカレートさせる彼女は、時には「試し行為」と言って、敢えてあなたにそっけない態度をしてあなたを不安にさせ、反応を確かめるような行動をとる時もあるかもしれません。
だから、今日もあなたは彼女に振り回され、疲弊しているのではないでしょうか。
時には我慢が限界に達して強く責めてしまうこともありますよね。
でも、あなたに責められ、辛そうにしている彼女を見ると、あなたは自分を責め、同時にそんな自分に惨めさを感じています。
「しばらくほっておこう!」とどっしりと構え、彼女の心変わりを待ってあげたい時もあるでしょう。
でも、その内「おれがこんなに我慢して待ってやってるのに、あの態度はなんだ?」とイライラしてきて、苦しくなる。
我慢の限界を迎えて彼女を責めてしまい、時には激しい喧嘩になり、またまたそんな自分を惨めに感じる。
まさに八方ふさがりです。
それでも、彼女をなんとか変えようとするあなた。
彼女を救いたいあなた。
そんなあなたに依存し、曖昧な態度を続ける彼女。
これが今あなたが苦しんでいる、二人の共依存の構造なのです。
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共依存脱却のために欠かせない、あなたの「自尊心」
ここまで読んで、「まさに自分のことだ!」と思ったあなたに、今の苦しい状況から抜け出すために意識してみてほしいことをお話しします。
キーワードは「自尊心」です。
自尊心とは、「どんな自分だったら後悔しないか」「自分はどうありたいか」と、自分のことを大切にする気持ちです。
「あなたのことは本当に好きだけど、これ以上仕事をしないで私を頼ろうとするなら、私はもう限界かな。残念だけど出て行くね」
こんな風に、相手との関係だけでなく、自分の気持ちも大切にすることが「自尊心を保つ人間関係」なのです。
ちなみに、自分のことしか考えずに行動して相手を傷つけることは、自尊心を保つことにはなりません。
相手を傷つければ自分も傷つき、結果として自尊心が下がるのです。
自尊心を保つということは、相手の気持ちを尊重しながらも、相手との関係において自分なりの境界線を持つことです。
彼女のことは好き。
前のような関係に戻ることを望んでいる。
でも、これ以上傷つけられてまで関係を続けられない。
さすがにここまで嫌な思いをさせられて、それでも耐え続けるような自分ではいたくない。
おれにだって限界はあるよ。
あなたは、このように「自尊心の境界線」を持つことができていますか?
これがうまくできないと、いつまでも限界を設けることができず、傷つけられ、怒りや恨みが強くなります。
怒りや恨みが強くなるほど、相手への執着は強くなり、余計に離れられなくる。
その結果、さらに自尊心が下がる。
まさに悪循環なのです。
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彼女を変えるのではなく、あなた自身が変わってみる。
ここまで説明すれば、気づく方もいらっしゃると思います。
今あなたに必要なことは、彼女を変えようとすることではなく
この苦しみから抜け出すために、自尊心に目を向けて、あなた自身が変わってみることなのかもしれません。
もし今あなたが、「自尊心が大切なのは頭ではわかるけど、でもどうしても彼女から離れられない」という「わかっちゃいるけどやめられない状態」なら、まず自分自身を「共依存」を切り口に振り返ってみることをお勧めします。
というのも、あなた自身に共依存の傾向があるか、またはトラウマの問題を抱えている可能性も考えられるからです。
例えば、親の喧嘩が絶えず、緊張感が強い家庭で育ったとすれば、「自分がどうしたいか」よりも「自分はどうあるべきか」と考える癖がついていることもあります。
あなたが幼少期から自分の気持ちは後回しで、親や大人の顔色を窺うことを優先して生きてきたなら、「自尊心を大切に」と言われても「自尊心ってなに?」と頭を抱えるのではないでしょうか。
また、親の暴力を目撃していたり、過去に恋愛でとても辛い経験をしたりという「心の傷」を抱えているなら、それがトラウマとなり再び傷つくことを恐れ、彼女に明確な境界線を引くことができないという人もいます。
つまり、あなた自身に強い「見捨てられ不安」がある可能性も考えられるのです。
今の彼女との関係を理解するということは、あなた自身をより深く理解するということでもあります。
もしあなたがこの辛い恋愛から脱却し、自分の気持ちを大切に生きていけるように変わりたいと思うなら、私は全力でお手伝いがしたいと思っています。
「だいぶ彼女のことを客観的に見れるようになってきました。相談を始めたころは辛くて辛くて仕方なかったんですが、今は一歩距離を置いて彼女を見れています。前よりも楽です。自分がどうしたいのかをちゃんと考えられるようになっています」
これは、カウンセリングを始めてもうすぐ4カ月になるクライエントさんの言葉です。
あなたも、きっと変わることができます。
ぜひ一度カウンセリングを受けてみてください。
いつでもお待ちしています。
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