普段、カウンセリングで恋愛や夫婦関係についての相談を多く受けますが、彼氏や彼女から、または夫や妻から、「過去の恋愛をいつまでも責められてしまう」という悩みを抱えている方にお会いします。
そのように相手を責める方の中には、パートナーの過去の恋愛を執拗に知りたがって、教えてもらったら急に不機嫌になったり
付き合う時にはちゃんと相手の過去の事情をわかっていて理解を示してたにも関わらず、そのことを蒸し返して責め立てたり
責められる人にとってはどうしていいのかわからない辛く苦しい状況に陥ります。
今日はそのような悩みを抱えている方が、今の困難から抜け出すために知ってほしい大切な話をします。
まずは、「夫から過去の恋愛をいつまでも責められて辛い思いをしている女性」のご相談を紹介します。
※ブログ執筆者 山﨑正徳(公認心理師・精神保健福祉士)のプロフィールは こちら
もう何年も前のことなのに、どうしてここまで責められないといけないの?

夫から、過去の私の恋愛を執拗に責められ続けて、本当に辛いです。
夫とは結婚して2年です。交際期間は2年でした。
実は、夫と交際を始める時に、その前から付き合っていた人とちゃんと別れることができてなくて、結果として1カ月半くらい重なってしまったんです。
その時、私は夫と付き合おうと心では決めていたので、気持ちは間違いなく夫にありました。
でも、私が前の彼にはっきりと「別れてほしい」と言うのが苦手で…
前の彼は「別れたくない」と強く言うし、夫は「早く付き合ってほしい」と言うしで、もうどうにもできなくて。
困った挙句、夫に「もう別れた」と嘘をついて付き合い始めてしまいました。
全ては私の責任なんです。
結局、夫に嘘をつき続けるのが申し訳なくて、もう振られても仕方ないと思って全てを打ち明けました。
そしたら、夫は「正直に言ってくれてありがとう」と言って許してくれて、それで私も前の彼にきっぱり別れを告げる勇気をもらいました。
その後、前の彼とは別れることができて、それから一年間順調だったんです。
でも、一緒に住み始めたあたりから、夫が機嫌が悪いと当時のことを責めてくるんです。
「おれをだました」「浮気してるんじゃないか?」「二股をかけた最低なやつ」とか、色々言われました。
話を聴いていると、交際期間が重なったことだけじゃなくて、 私が夫以外の男性と付き合っていたことそのものが気に入らないようなんですよ。
そんなこと言われても、と思いますよね。
でも、元はと言えば私がいけないし、確かに私は責められるようなことをしたんです。
だから、彼に信用してもらえるようにがんばりました。
それで、結婚すれば信用してくれるかなと思ったんですけど、結婚しても変わらなくて。
普段はすごく優しくて、「大好き」と言ってくれるんですけど、機嫌が悪いといつもそれで怒られて。
ずっとそれを繰り返していて、疲れてしまいます。
先週は、仕事で何かあったのか、イライラして帰って来てずっと無言で。
そしたら、急に「嘘つき!」「よくあんなひどいことをして平気でいられるな!」とすごくキレて雑誌を投げられました。
相談している親友がいるんですけど、親友は「そんなのおかしい!DVだ!謝る必要なんてないよ」と言ってくれます。
まあ、確かに、もう4年も前のことだし、私はちゃんと謝って、夫だってわかっていて交際を続けたし結婚も申し込んできたし。
そう考えるとそうなんですけど、私は彼に物凄い深い心の傷を負わせてしまったんだなと思ってます。
夫のことは好きです。
でも、これからもこういうことが続くと思うと、どうしていいのかわからなくて…。
なんとかなりませんか?
私はどうしたらいんでしょうか…

これは、言うまでもなくとても苦しい深刻な悩みです。
皆さん、相談に訪れる時にはかなり疲弊していますし、彼氏や夫(もちろん彼女や妻の場合もあります)への強い罪悪感の一方で、理不尽さや不本意さも抱き、混乱している方が多い印象を受けます。
「もとはと言えば悪いのは私」「彼を傷つけたことに変わりはない」という思い
一方で、「そんなこと言われたって、私にこれ以上どうしろって言うの?」「いくら何でも彼の言うことはおかしいんじゃないかな」という思い
責め立てられるたびに2つの気持ちで揺れ、途方に暮れる。
謝ってどうにかできるなら謝る。
むしろこれまでたくさん謝ってきた。
でも、許してもらえない。
ただただ、彼と仲良く穏やかに過ごしたい。
それだけなのに、どうしても信用してもらうことができず、今日もあなたは傷ついています。
本当に辛く苦しいことです。
それでも、何とか彼にわかってもらおうとしているあなた。
そんなあなたは、とても思いやりのある、本当に優しい人だと思います。
それでは、なぜあなたはいつまでも責められているのでしょうか。
あなたの夫は、どうしてあなたのことを信用できないのでしょうか。
私が感じることをお話しますね。
あなたの過去を許せずに責めてしまう夫の心理とは?
「夫はどんな気持ちなんですか?親友は『すごく嫉妬深い人』だなんて言うんですけど、どうなんですかね」
「普段は優しいのに、急に人が変わったように過去のことを責める彼って、いったい何なんですか?二重人格かと思って怖くなってしまいます」
パートナーの過去に執着して執拗に責め立てる人には一体どんな特徴があるのか、まずは簡単に解説しておきます。

これはあくまでもカウンセリングで相談を受ける中で私が感じる特徴ですが、相手の過去に過剰に固執して責めてしまう人は、「パートナーとの人間関係の境界線」を引くことが苦手な印象を受けます。
「境界線」とは、「私」と「あなた」は全く別の価値観をもつ、別の人間であることを受け入れ、お互いを尊重して付き合うことができる、摩擦の起きづらい理想の人間関係です。
境界線を上手に保てる人は、恋愛や夫婦の関係でも、相手のそれぞれの価値観や考え方などを尊重して付き合うことができます。
相手がこれまで歩んできた人生も尊重することができますから、相手の過去に干渉し、恋愛経験を根掘り葉掘り聞き出して点検するようなこともしません。
どちらかというと、お互いが多少の秘密を持ち合うことを許容し合うくらいの距離感の方が、夫婦も恋人も安全で良い関係が築きやすいのです。
ただ、この境界線を引くことが苦手な人は、恋愛において「運命共同体」のようなとても近い関係を相手に求める傾向にあります。
相手の全てを知っていないと気が済まないし、相手が自分の全てであるのと同時に、相手にとっても自分が全てであって欲しいと考えます。
あなたの過去も全て把握しておきたいし、知って安心しておきたい。
自分が知らない秘密なんてあり得ない。
だからこそとても傷つきやすく、ちょっとしたことで不安と不信にかられ、その度にパートナーへの要求も強くなりがちです。
本当は自分の性格的な特徴が原因で傷ついているのですが、「おまえのせいだ!」とパートナーに責任を押し付けてしまう人も少なくありません。
それが行き過ぎるとコントロールになり、モラハラやDVなどの暴力に発展することもあります。
そのような人にとって、あなたが「過去に別の人を愛していたこと」、そして「短期間と言えども嘘をついて別の人との交際を続けていたこと」は、年月が経ってもとても受け入れがたく、強い葛藤を伴う事実となり得るのです。
※このタイプの人の特徴と改善策については以下の記事で詳しく解説しています。
「過ちを許容してあげたい大人の自分」と「絶対許せない子どもの自分」の激しい葛藤
「でも、普段は夫はとても優しいんですよ。いつも怒っているわけではないんです。それはどういうことなんですか?」
ここまでの説明を読んで、夫の二面性について疑問に思う人は多いはずです。
「穏やかで優しい夫」と「過去を執拗に責めてくる夫」
まるで大人と子どものようにも見えますよね。
「一体どっちが本当なの」?とあなたは不安に思うでしょう。
これについて説明しますね。
まず、率直に回答すると「両方とも本当のご主人」なのです。

あなたのご主人は、あなたが思うように本当に優しい人です。
あなたが当時犯した過ちについて、あなたが心から反省していることをわかっています。
もちろん、あなたがご主人を愛していることもわかっているのです。
だから、当時あなたを許して、受け入れたのは決して偽りではないのです。
「もう過去のことだ」「彼女を信用しよう」「自分だって他に付き合った女性はいるし、お互い様だ」
このように思い、あなたといい関係でいたいと本当に思っているのです。
でも、そんな思いの一方で、それとは正反対の「子どもの自分」も出てきてしまいます。
些細なことでスイッチが入ると、傷つき、不信や嫉妬にかられ、それに伴う怒りや不満が大波のように襲ってきます。
「裏切られた!」「本当はおれのことを馬鹿にしているんじゃないか」「過去の男と比較されているのでは?」
強烈な負の感情に飲み込まれ、コントロールを失い、それがそのままあなたに向かいます。
「大人でありたい自分」と「絶対に許せない!と憤る子どもの自分」とが同居しており、「大人の自分」であろうとすることに強いエネルギーを使う分、スイッチが入ると「子どもの自分」が爆発します。
コントロールが効かずにいたずらにパートナ-を傷つけてしまうことで惨めな気持ちにもなりやすく、精神的なバランスをとるため、ついついその責任をパートナーに押し付けやすくなるのです。
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過去の恋愛をいつまでも責められる「本当の理由」
「私が悪いと思ってたけど、やっぱりこれは彼の問題でもあるんですね。少しほっとしました。まあ、でも、それでもやっぱり私が悪いんじゃないかなとも思ってしまう自分がいて…」
ここまで読んで、あなたの中で相手に対する理解を深めているのと同時に、もしかしたらあなたは自分に対する違和感も覚えているかもしれません。
そうだとしたら、あなたの違和感はとても大切なものです。
なぜなら、この問題には、あなた自身の人間関係の課題も大いに絡んでいる可能性があるからです。
例えば、あなたには次のような特徴がありませんか?
▶相手が不機嫌だと、自分が何かしてしまったのではないかと不安になる。
▶自分に自信がなくて、相手に反論されると自分が間違っているのではないかと思う。
▶人間関係に対する無力感や不全感が強く、理不尽なことを言われても「何を言っても無駄」と諦めてそのまま関係を続ける。
▶人の顔色が気になり、相手が望んでいることを察して動く。

あなたにこのような特徴があるとしたら、いくら相手の言うことが理不尽でも、あなたは「私が悪いんじゃないか」「ちゃんと謝って許してもらおう」「何を言っても無駄だ」と無力感に苛まれ、いつまでも関係を変えることが難しいかもしれません。
それどころか、相手が怒るたびに「わかってもらおう」として近づくため巻き込まれ、怒りをぶつけられてサンドバック状態に陥ります。
その結果、相手は自分の問題に向き合うどころかあなたに責任を押し付けやすくなり、依存し、行動がエスカレートしていきます。
つまり、あなた自身が彼の問題に巻き込まれていることで、より問題が長期化し、なおかつ深刻化しているのです。
私は、このような問題は「妻の過去の恋愛に固執して責めてしまい、妻を傷つけてしまって困っている」と、あなたよりも夫の方が自分の問題として困らなければ、二人の関係を変えることは相当難しいだろうと思っています。
だからこそ、あなた自身が相手の役割や責任まで背負わず、巻き込まれない考え方を身につけなければなりません。
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相手を変えようとする前に、まずはあなたが変わってみる。
「先日はお騒がせしました。彼とよく話し合い、もうこれ以上私を責めるなら一緒には暮らせないことを伝えました。彼もさすがにまずいと思ったのか、黙って私の話を聞いていました。それで、私が一緒に生活する条件として、彼にもカウンセリングに通って問題と向き合ってほしいと伝えたら、『そうする』と言ってくれました」
「私も今までずっと自分に自信がなかったのではっきり言えなかったんですけど、今度ばかりは限界でした。覚悟を持って伝えられて良かったです。背中を押してくれてありがとうございました」
これは、同棲していた彼に過去の恋愛を責められて苦しんでいたクライエントさんのお話です。
「私はそんなにきっぱり言えない!そんなに強くない!」と思ってしまうのではないでしょうか。
でも、決してそうとは言い切れません。
実際にこのクライエントさんも、あなたと同じように自信がなくて、いつも自分を責めて、憔悴していたのです。
そのような状況の中、カウンセリングに来て自分のことを知り、彼にとっても自分にとっても最も良い方法を考えた結果、彼に本気と覚悟が伝わる行動を起こせたのです。
すごいことですよね。
私は別居や別れを勧めるつもりはありませんが、もしあなたが今の状態から抜け出したいと強く願うなら、「相手を変えようとする」のではなく、まずは「あなたが変わってみるための取り組み」を行うことを強く勧めたいです。

あなた自身が、人間関係において、相手との関係だけでなく「自分の気持ち」も大切にできるように
どこまでが自分の責任で、どこまでが相手の責任なのかを判断して、無理に相手の責任を背負うことなく生きていけるように
相手があなたの尊厳を傷つけてきたら、不本意であることを伝え、自分を大切に行動できるように。
大丈夫です。
あなたはきっと変わることができます。
精一杯サポートをさせて頂きますので、ぜひカウンセリングでご相談ください。
一緒にがんばっていきましょう。
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