「共依存を克服する方法」の第3回です。
今日は、相手の尻拭いをやめられない関係からなかなか抜け出せずに辛い思いをしている方に、ぜひ参考にしてほしい取り組みを紹介します。
「同居している彼がちゃんと働かないで、ずっと私の収入に頼ってるんです。彼は2年前にうつ病で会社を休職して、それで1年前に退職したんです。今はもう薬も飲んでないし特に問題なさそうに見えるんですけど、どうも仕事をする自信がないのか、なかなか動かなくて。せめてハローワークに行くとか、働く自信がないならカウンセリングとかで相談するとかしてもいいと思うんですよ。精神科の先生にもそういうのは勧められてるらしいんですけど、一向に動く気配がなくて。私も彼を信じて見守ってますけど、でも、ちょっときつくなってきました。なんか、私に依存してないかな?と思うんです。はっきり言うべきことを言わないとダメだよと友達に言われるんですけど…でも、私が何か言って具合が悪くなるとまずいかなとか、そんなこと考えちゃって…」
「息子がギャンブルをやめなくて。これまで100万近い借金を2回も父である私が立て替えました。もうギャンブルはやらないと誓って1年なんですけど、結婚もしたし心を入れ替えたかなと思ってたら、昨日消費者金融から督促状が来たって嫁から泣きながら電話がありました。どうしてこうなるんでしょうか。あれだけ言って聞かせたのに。息子の嫁は怒って離婚すると言ってるし、息子は今度こそギャンブルをやめるから、私に払ってほしいと言ってます。もう、どうしたらいいものか…」

このように、相手の問題をサポートしているつもりが、いつの間にか巻き込まれてとても苦しい思いをしている。
助けてあげたい気持ちはもちろんある。
でも、この関係をいつまでも続けることが本人にとって良いことなのだろうか。
私の手助けが、本人にとってマイナスに働いていないか?
こんな思いの一方で、自分がここで助けなかったら、この人はどうなってしまうんだろうか。
私はとても冷たい人間なのではないだろうか。
こんな相反する思いで揺れ動き、どうしていいかわからない。
あなたも、こんな苦しい葛藤を抱えていませんか?
こういう問題は、判断がとても難しくて辛いですよね。
あなたが悩むのも無理はないと思います。
でも、もしあなたが「どうして私はいつもこういうことで悩むんだろう」「友達が言うように、もっときっぱり対応できればいいのに…」と、言うべきこと、やるべきことができない自分に違和感を覚えるとしたら。
自分の対応が相手のためにならないとわかっているにも関わらず、やめられないとしたら。
ぜひここから先も読み進めて頂くと、解決のためのひとつのきっかけとなるかもしれません。
※参考記事
相手の役割と責任を背負い、巻き込まれて尻拭い役になる。
共依存の方の特徴の一つとして、「相手の役割と責任を背負い、巻き込まれて尻拭い役になる」ということが挙げられます。
困っている人を助けてあげたい、このまま放っておけない、なんとか相手のためになりたい、私さえ我慢して済むならそれでいい、嫌われたくない、必要としてほしい
そんな思いからついつい世話を焼きすぎてしまったり、役割を背負いすぎてしまったり
良かれと思ってやっているつもりが、いつの間にか相手に依存され、さらに問題が悪化する。
こういった行為は、「イネイブリング」とも言われています。
イネイブリングについては、以下の記事で解説しています。
親にお金をせびられて金銭的に頼られてしまうあなたが、「親に依存される理由」と今すぐできる対処法。
このような関係に陥りやすい方の話を聴いていると、今困っている相手との関係だけでなく、職場、家族や友達、恋愛などの様々な場面で、過剰に役割や責任を背負いやすい傾向がある印象を受けます。
そんな傾向があなたにあるならば、ぜひ日常的に自分自身がいつの間にか役割や責任を背負いすぎて尻拭い役になっていないか、点検する習慣をもちましょう。
今日からできる、具体的な点検の方法について説明しますね。
※参考記事
「最も困っている人」=「本当に困るべき人」になっていますか?
相手との関係で「尻拭い役になってないかな?」と思ったら、まず、次のことを考えてみましょう。
「この問題で最も困っている人」=「この問題で本当に困るべき人(責任がある人)」になっていますか?
例えば、冒頭の「彼が働かない」という悩みを抱える女性。
この問題で最も困っているのは誰ですか?
おそらく、彼ではなく相談者の女性ですよね。
では、この問題で本当に困るべき人は誰ですか?
これは言うまでもなく、「彼」ですよね。
本来は、彼が「うつ病で退職して以来、自信が持てなくてなかなか仕事に前向きになれません。それで彼女に負担をかけてしまっています」と困って相談に来るべきところ、このケースでは彼女が困って相談に来ています。

つまり
「最も困っているのが彼女」で「本当に困るべき人が彼」
このように、「最も困っている人」と「本当に困るべき人」がイコールでない場合、「最も困っている人」が「困るべき人」の役割と責任を背負ってしまっている可能性を疑いましょう。
彼女が彼の尻拭い役になってしまっているのです。
ここまで確認出来たら、次の質問に答えていきましょう。(下の質問の③から答えてみてください)
二人の関係、そしてあなた自身の気持ちや課題が明確になってきます。
「5つの質問」で関係を点検し、あなたの気持ちを整理する。
質問① この問題で一番困っているのは、誰ですか?
質問② この問題で最も困るべき人(この問題について責任がある人)は、誰ですか?
①=②にならない場合、さらに質問に答えてください。
質問③ ②の人が困っていない理由はなんですか?
質問④ ②の人が困るために必要なことはなんですか?
質問⑤ 最後に、④で回答した対応をあなたができない理由はなんですか?

ひとつずつ答えてみましょう。
注意点として、⑤は必ず「私」を主語にしてください。
例えば、「働けと言うと彼が嫌がるからです」と彼を主語にしてしまうことで、彼の問題になって終わってしまいます。
あなたが今の状態から抜け出すために、「私」を主語に自分がイネイブリングをやめられない理由を考えてみましょう。
「私が、彼に嫌われるのが怖くてはっきり言えないからです」
「私が、困っている息子をどうしても放っておけないからです」
このように、「私」を主語にすることであなた自身の課題も見えてきます。
相手のことを思うとついつい手助けしてあげたくなるのは自然なことで、あなたはとても優しい人だと思います。
ただし、問題が大きくなっているにも関わらず、あなたがその役割と責任を手放せずに抱え込んでしまうとしたら、あなた自身も共依存の問題と向き合ってみると良いかもしれません。
まず始めてみてほしい取り組みは、この5つの質問で人間関係を整理して、役割と責任を背負いすぎていないのかを点検する習慣を持つ。
そして自分の課題や気持ちを整理していく。
ぜひ、ここから始めてみてください。