共依存を克服する方法の第5回です。
今日は、共依存の人が特に苦手な「自己主張」についての話をします。
「ブログを読んで、私が共依存だなというのは本当によくわかりました。いつも人の顔色ばかり気にして、自分の言いたいことが全然言えないんです。だから、これからは言いたいことはちゃんと言おうと思うんですよ」
「でも、それでまた悩んじゃうんですけど、相手を怒らせないように仕事を断れるような、うまい断り方ってありませんか?これまで断るようなことをほとんどしてこなかったので、いざ断ろうとしてもよくわからなくて…。それで今回、カウンセリングを受けてみようと思いました」
これは、カウンセリングに来たクライエントさんのお話です。
この方のように、自分が共依存傾向であることは理解したものの、いざ相手との関係を変えるために自分の気持ちをきちんと伝えようと思っても、その経験がないのでどうしていいのかわからない。
つまり、「自己主張」がうまくできない人が多いのです。
※参考記事
◆共依存を克服する方法①「相手の感情に巻き込まれない習慣作り」
◆共依存を克服する方法②「間(ま)を作り、自分の気持ちを確認する」
「我慢をして何も言わない」か「強く主張する」の二択になる。
共依存の人にありがちな自己主張のパターンは、「我慢をして何も言わない」か「強く主張する」かの二択になりがちです。
自信がないし、相手に悪く思われたくない。
だから、相手にお願いしたいこともあまり言えないし、逆にお願いされれば断れない。
人によっては、相手にお願いされていなくても、相手の意を汲んで先回りして動きます。
あなたもそんな傾向はありませんか?
これが、いわゆる「0(ゼロ)の自己主張」です。
そんな風にいつも我慢をして(その自覚がない人もいます)自己犠牲的なコミュニケーションをとっている人でも、何でもかんでも我慢しているわけではありません。
時には「それだけは絶対に無理!」と思って断ったり、不本意だと思うことをされればはっきりとそれを伝えたり、言わないといけない時には自己主張をすることもあります。
ただ、共依存傾向の人は、ここでの自己主張がとても強くなりがちです。
言い方がよくわからなくて、「何とか言わなきゃ!」と一生懸命になる結果、とても強い言い方になってしまったり
それまでずっと我慢していて不満が蓄積している分、すごくきつい言い方や態度をとってしまったりします。
「友達のわがままにずっと付き合い続けてたんですけど、もういい加減に限界だ!と思って、縁を切りました」
こんな風に、あなたが我慢していることや不満に思っていることをそれまでは何も伝えず、我慢の限界に達したらバサッと切る。
こんな極端な人間関係をとってしまう人も珍しくありません。
友達からすると、「私なにかした?私が何かまずいことしてたなら言ってくれればいいのに…」と驚き、戸惑ってしまいます。
周りからすると、いつも何も主張しない人が急にはっきりと強い態度をとるので、極端な印象を抱きやすくなりますよね。
これを、先ほどの「0(ゼロ)の自己主張」に対して、「10の自己主張」と名付けます。
自己主張の強さを調節する。
何も主張しない「0の自己主張」と、強くはっきりと主張する「10の自己主張」
この二通りのパターンでしか自分の気持ちを表現できないと、人間関係でストレスがたまる一方です。
我慢ばかりは疲れますし、強い自己主張だと人間関係のトラブルが増えて、人を傷つけ、そして自分も傷つきます。
だからこそ、あなたに必要なのは「0から10の間の強さの自己主張」を身につけることです。
●例えば、頼まれた仕事を断りたい時(上から下に行くほど、自己主張が強くなります)
・頼まれなくても、相手が望んでいることを察して動く。
・快く引き受ける。
・ためらいを表しながらも引き受ける。
・すぐに引き受けず、一時間くらい考えてから引き受ける
・「今忙しくて無理そうです」と言ってみて、それでも頼まれたら引き受ける
・断ってもそれでも頼まれたら、「ちょっと考えさせてください」と言って検討する時間をとる。
・断ってさらに頼まれても、何とか受けないようにがんばってみる。イヤそうな顔をして、難色を示す。
・きっぱりと断る。自分の主張を貫き、相手の言い分は聴かない。
●相手にお願いしたい時(上から下に行くほど、自己主張が強くなります)
・お願いしない。
・お願いしたい気持ちを、それとなく言動に表す。
・お願いしたい気持ちが相手に直接伝わるように言動に表す。
・遠慮がちにお願いして、断られたら受け入れる。
・よりお願いしたい思いを強くして頼み、断られたら受け入れる。
・堂々とお願いする。断られたら受け入れる。
・堂々とお願いする。断られたら、さらにお願いしてみる。粘る。
・堂々とはっきりと要求し、断られても主張する。
このように、二択の極端な自己主張から、場面や状況に合わせて強さを調節できるようになると、あなたの人間関係も変わってくるはずです。
「言って良かったな」「言ってみるもんだな」という経験を積み重ねる。
自己主張が苦手な人は、「主張すること」=「人間関係に摩擦が生じる」と思いこんでいる傾向があります。
つまり、人間関係が安全なものだと思えないので、なかなか言いたいことを言えないのです。
一方で、「何を言っても大丈夫だ」と思える相手(家族や恋人、親友など)には自己主張が強くなり、相手を困らせてしまうこともあります。
そんなあなたに取り組んでほしいこと。
それは、「言ってみるもんだな」という経験を積み重ねてもらうことです。
・「今日はちょっと忙しくて、明日ならできるんですが…」と仕事を断ってみる。
・ランチの時に、行きたいお店や食べたいものを言ってみる。
・「次の連休は帰ってきなさい」という親に「用事があるから無理」と言ってみる。
・夫に「休みの日は家事を手伝ってほしい」と言ってみる。
何でもいいのです。
あなたが言ってみようかなと思える相手に、自分の気持ちを適度な強さで伝えてみてください。
多少の摩擦が生じる場面はあるかもしれませんが、これを続けてみることであなたはわかるはずです。
「人間関係は、あなたが思っているほど危険なものではない」ことを。
カウンセリングに来ているクライエントさんを見ていても、言わないで我慢することよりも自分の気持ちを伝えるメリットがわかり行動に移す機会が増えてくると、人間関係のストレスが減り、表情が穏やかになる印象があります。
大丈夫。
あなたもきっと変わることができますよ。
どんなに小さいことでも良いので、できるところから取り組んでいきましょう。