今回は「子どものゲームの問題」で悩む方に、習い事のストレスとゲームの関連性を切り口に記事を書きます。
まず、普段「子どもがゲームをやめない」という問題でお困りの方の相談を受けていて、「ゲームをやめられなくなるような習い事やお稽古事の多い生活を親が子どもに強いている」と感じることが多々あります。
例えば、「週3日は塾、残りは水泳、習字、英会話で、自由なのは日曜日だけです。でも、日曜日は塾の宿題をやらせています」と言ったように、ハードなスケジュールで習い事をこなしている子どもは多いですよね。
「習い事が終わって家に帰って、ご飯を食べたら宿題をやって早く寝るように言うんですよ。でも、どうしてもゲームを30分でいいからやりたい!って言うんです。だから30分と約束してやらせるんですけど、絶対にやめないんですよ」
「昨日なんて22時を過ぎてもやめないから取り上げようとしたんです。そしたら、ものすごい形相で怒って抵抗するんです。最後は夫がかなり強く怒って、それで渋々ゲームをやめていました。でも、まだまだやりたそうでした。本当に困りました。ゲーム依存ですかね。どうすれば治りますか?」
習い事の多い生活は、親にとっては「送迎ストレス」の多い生活であるとも言えます。
忙しい親からすれば、帰宅した子どもが早くやることをやって、早く寝てくれたら本当にありがたいですよね。
それなのに毎日のようにゲームに執拗にこだわる子ども。
やめさせようとするやりとりだけで疲れ切ってしまいます。
ちなみに、アクサダイレクト生命が0~9歳児の母親を対象にした「第8回子どものおけいこ事に関する調査(2022年)」では、習い事をさせている割合は、2013年の調査開始以来、最も高い55.9%を記録しています。
コロナ禍の休校による学力低下・体力低下を補う目的はもちろん、オンラインの普及なども手伝い、今の子どもにとって習い事がとても身近になっている様子がわかります。
また、東京オリンピックで中学生や高校生の選手が活躍したことなどから刺激を受け、子どもが小さいころから真剣に競技に打ち込ませるようとする親も増えている印象を受けます。
では、このような子どもの習い事の多い生活とゲームの問題にはどのような関連があるのでしょうか。
※ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑 正徳のプロフィールは こちら
「良くないことだとわかっているけど、やめられません…」
ここから、「行動のコントロールができない」という苦しい悩みを抱える二人の大人の相談を紹介いたします。
「子どものゲームの話なのに、なぜ大人?」と思うかもしれませんが、まずは読んでみてください。
■Aさん(22歳・女性)「過食が止まりません!」
仕事から帰ると過食が止まりません。
「今日こそ過食をやめるぞ!」と思うのですが、どうしても家に帰ると物足りなくて、コンビニでスナックとかスイーツを大量に買い込んできて食べてしまいます。
過食がひどくなったのは、異動して上司が変わって、残業が急に増えた10月からです。
毎日仕事が大変で、上司とも合わないしもうストレスがすごくて。
帰ると22時を過ぎています。明日も仕事かと思うと、嫌で辛くて。
なんとか気持ちをリセットしたいんですよ。
そうすると、どうしても食べずにいられないんです。食べないと気持ちを満たせないんです。
■Bさん(35歳・男性)「散財とお酒がやめられない!」
広告代理店に勤めてるんですが、とにかく激務で。一年中仕事してます。
家に帰れば小さい子どもが2人いて、妻は僕が忙しくてあまり家にいないからいつもイライラしていて。
正直、家でも休めなくて辛いんです。
それで、問題なのが、仕事終わりにガールズバーに行くようになってしまって、そこで散財してしまうんです。
酒もかなり飲んじゃって、二日酔いで会社に行って怒られたこともあります。
ガールズバーにハマったのは二人目の子どもが生まれた去年からなんです。
仕事終わったら真っ直ぐ家に帰らないといけないとはわかってます。
でも、仕事がハードだし、家でも休めないし、どこかで息抜きをしないともたなくて。
それで、どうしても帰りに寄ってしまうんです。止められないんですよ。
--------------------------------------------
ここまで読んでいただき、冒頭のゲームの相談と照らし合わせて、どんなことに気づきますか?
子どもがゲームをやめられない原因は、どこにあるのでしょうか。
子どもの性格的な問題でしょうか。意思の弱さなのでしょうか。
ここを履き違えてしまうと、いくら子どもを叱っても、問題は解決しません。
毎日ゲームをめぐってバトルを繰り返し、親も子どもも疲弊します。
ストレスが強いと、行動のコントロールが難しくなる。
当たり前のことですが、ストレスが溜まると苦しいですよね。
ストレスを感じている状態というのは、「辛いな」「嫌だな」と思いながらも我慢を続けているような時ですから、早く今の状況から解放されたいと思います。
だから、辛い仕事が終わると嬉しいですよね。
「やっと終わった!」と解放されてから、時間があれば同僚と飲みに行ったり、ゲームをしたり、自分の好きなことをして気持ちを切り替えます。
こうやって精神的なバランスをとることはとても大事ですが、一方で「ほどほどでやめる」ということができないと生活に支障が出ます。
「もう少しゲームやれたら楽しいなー」と感じても、「明日は仕事だから寝ないと」と思ってゲームのスイッチを切って、翌日に備えて寝る。
このようにして自分の行動をコントロールすることで、気分転換としてゲームを楽しめるわけです。
では、あまりにも仕事のストレスが強かったらどうでしょうか。
朝から忙しく働いて22時過ぎにようやく帰宅し、明日も朝から仕事。
疲れているから早く寝ないといけないのはわかる。
「でも、辛い仕事からようやく解放されたんだから、ストレスを発散したい!」
「気分転換してリセットしないと、辛くて辛くて眠れないし、明日会社に行くなんて無理!」
こんなふうにストレスが強すぎると、頭では「ゲームよりも睡眠が大事」とわかっていても、感情が追いつきません。
辛さ、苦しさ、イライラなどの負の感情が強いと、行動をコントロールできなくなります。
わかっていても、ゲームをやめられなくて、毎晩夜更かししてしまい、睡眠不足で出勤する。
その日も仕事が忙しくてヘトヘトで帰宅して、「寝なきゃ」とわかっていてもゲームをやらないと納得できないし満たされない。
だから寝不足でもゲームをやって、さらに体調が悪くなる。
こうやって負のループに陥り、依存行動がエスカレートしていきます。
つまり、ストレスの強い生活をしていると、行動のコントロールを失いやすくなるのです。
過食、そしてお酒やガールズバーでの散財がやめられないという2名のケースがまさにそれです。
あまりにも心身に負担のかかる生活をしていると、癒すことのできない苦痛や辛さがストレスとして蓄積し、行動のコントロールを失ってしまうのです。
だから、やみくもに「今日こそ過食しないぞ!」「お酒をやめるんだ!」と自分に言い聞かせて、意思の力で乗り切ろうとしてもうまくいきません。
大切なのは、「今は過食をしないと精神的なバランスがとれないくらいストレスがかかる生活をしている」と客観的に捉え、生活を見直してみることです。
ストレスの強い子どもにとって、ゲームを奪われることは死活問題。
ここまで読んでいただくとわかると思いますが、お子さんのゲームの問題も、まず同じような見方をして考えてみる必要があります。
例えば、毎日学校から帰ったら塾や水泳などの習いごとに行き、習いごとが終わって家に帰ったらもう21時。
親からすれば「もう遅いんだから早く宿題やりなさい!」となるかもしれませんが、子どもにとってはようやくストレスから解放されて、少しでもゲームの時間を死守したいと考えるのは不思議ではありませんよね。
そこで気分転換をしておかないと、また明日も朝から学校、そして放課後は習い事です。
どこかで息抜きをしておかないとバランスがとれないほどにストレスがかかっていたら、ゲームができないことは子どもにとって死活問題なのです。
「ゲームを取り上げようとしたらものすごい形相で子どもが怒った」というのも、そう考えると理解できる気がしないでしょうか。
子どもは、それくらい必死に毎日サバイバルをしている可能性があるのです。
「子どもの問題」ではなく「家族の問題」として向き合ってみる。
「なるほど!確かに、うちの子がゲームをやめないのはストレスのかかる生活をしているからかもしれないな。確かに土日は野球だし、平日は塾もあるし、大変だろうな。子どもともよく話して、もう少し余裕のある生活にできないか考えてみようかな」
このブログを読んで、このように考えられる人もいると思いますが、実際のところはこのようにスムーズにいかないケースが多々あります。
「確かに、子どもに負担のかかる生活を強いているのはわかりました。でも、私はどうしても子どもの将来のために、今のうちに勉強させておかないといけないんです!!!受験のために塾に行って今から準備させないといけないし、体力をつけるために水泳もさせないといけないんです!!!」
以前、切羽詰まった表情でこのように話したクライエントさんがいました。
これだけ思いが強いと、きっと子どもも「塾をやめたい」とは言えないし、「どうせ何を言っても無駄だ」と感じるのではないでしょうか。
むしろ、親が感情的になればなるほどに子どもは強い自己主張を身に着け、中学生くらいになると「ゲームを取り上げようとすると物を投げたり大声を出して暴れる」といった反撃を受けることも珍しくありません。
他には、こんなケースもあります。
「夫が、子どもにはどうしても空手をやらせたいというこだわりがとても強いんです。私は空手を続けてもいいと思いますが、今のようにほぼ毎日、それこそ土日も費やすことはないと思うんです。でも、夫は本当にこだわりが強くて。子どもたちも父親に何を言っても無駄だと諦めているんだと思います。だから、空手が終わって帰ってきてからゲームのとりあいで、それで激しい兄弟喧嘩になるんです。夫には私の気持ちを伝えて話し合ってみようと思いますが、でも、聞いてくれないんです」
子どものゲームの問題の背景には、親の思いの強さや執着、そして話し合うことができない夫婦関係など、様々な「家族の問題」が絡み合っています。
だから、「子ども個人の問題」にしているといつまでも解決しないのです。
習い事ストレスは、世代を超えて連鎖する。
また、習いごとや勉強などへの親の思いの強さや執着は、親自身が抱えるトラウマが関係していることも珍しいことではありません。
子どもの習いごとを減らす必要があると頭では理解しても、「大変だからやめさせてあげよう」と素直に思えず、「ずるい!」「甘えるな!」といった怒りの感情が強く出てきて子どもに向き、結果として子どもの負担を減らしてあげることができません。
このような方のお話を聞いていくと、自分が子どものころに親に厳しくされていて、好きなことを我慢させられてきたようなケースが多々あります。
つまり、自分自身の癒されない怒りや恨みが子どもに向き、結果として自分が親からされて辛かったことを、親として子どもにしてしまっているのです。
ということは、あなたの子どもも、その怒りを次の世代に連鎖してしまう可能性だって十分あります。
繰り返しますが、だからこそ「子ども個人の問題」にしていると解決しません。
もしあなたが今、お子さんのゲームの問題で困り毎日疲弊しているのだとしたら、一度足を止めて考えてみませんか。
この機会に一度じっくりと問題の整理を行ってみませんか。
ご自分のこと。
ご家族関係のこと。
向き合うのは勇気のいることですし、とてもエネルギーを使います。
だからこそ、私にお手伝いをさせてください。
いつでもお申込みをお待ちしております。
※関連記事
「うちの子ってゲーム依存症?発達障害?」いくら叱ってもゲームをやめない子どもの病気を疑う前に試してほしい「親子の境界線の引き方」