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あなたの「ネガティブ思考」が専門書を読んでも治らない理由と、改善のために取り組んでほしいこと。

 

今回は、共依存の問題で苦しむ方にほぼ共通して見られる、「ネガティブ思考」についてお話をしていきます。

 

ネガティブに物事を受け止める癖を治したいけど、どうしても治らない。

 

「相手が不機嫌だと、いつも私が何かしたんじゃないかと思って、不安になります」

 

「仕事を頼まれるといつも断れないんです。周りからは、無理なら断らないとダメだよと言われるんですけど、僕は役に立たない人間だから、仕事を断ってはいけないと思ってしまうんですよ」

 

このように、物事を何でも悪く考えてしまう癖は、あなたにもありませんか?

 

以下に、自分を苦しめる「考え方の癖」の例を挙げてみますので、あなたに当てはまるものがあるかを点検してみてください。

 

★完ぺき主義(100点か0点か思考)

少しでもミスがあると「すべて失敗」と思い込み全否定する。

 

★選択的注目(心のフィルター)

「できたこと」「良いこと」はスルー。「できなかったこと」「悪いこと」だけ扱う

 

★結論の飛躍

「きっと私のことを嫌いに違いない」など、根拠なく悲観的な結論を出す。

 

★過度の一般化

ひとつのネガティブな出来事を根拠に、「自分は何をやってもだめ」と結論付ける。

 

★自己関連付け

何か問題が起きると、根拠もなく「すべて自分のせい」と考える。

 

★○○すべき思考

常に「○○すべき」「○○しなくてはならない」と考える。

 

★レッテル貼り

うまくいかないと、「ダメな人間」「必要ない存在」などと自分にレッテルを貼る

 

★「あなたならOK」だけど「私ならNG」

他人が失敗すると「気にしないでね」「誰にでもあることだから」と前向きな言葉をかけられるのに、自分がうまくいかないと「許されるはずがない」「私はダメな人間だ」と過度に自責的に考える。

ここまで読んだあなたの心の声は、きっと「ほとんど自分に当てはまってる!」ではありませんか?

 

でも大丈夫です、ほとんど当てはまるのはあなただけではありません。

 

共依存の問題で苦しむ方は、根本的に自分に対して自信がもてず、物事をネガティブに受け止めてしまうんですよね。

 

「どうせ私が悪いんだ」

 

「私さえ我慢すればいいんだから」

 

「どうせ言ったって無駄だし、私が責められるだけだし」

 

この考え方が今のあなたを苦しめていますが、でも、この考えは、本来は子どものころのあなたを守ってくれたものでもあるんですよね。

 

いくら相談しても何も聞いてもらえなかったり、親から「おまえが悪い!」と怒られるだけだったり。

 

そんな環境の中にいれば「私が悪い」と思って諦めれば、それで葛藤しなくて済みますから、いくらかマシです。

 

そうやって、自分を悪者にして、色んなことを諦めて生きていると、ネガティブな考え方の癖があなたの体の一部になります。

 

だから仕事や子育て、人間関係においてストレスが溜まり、疲れるし、自分が嫌になるし、毎日苦しいですよね。

  

そんな辛い日々を抜け出すために、ネガティブ思考から抜け出すための専門書を買って読んだり、動画を見たりして改善に取り組んでいる人は、今はとても多いと思います。 

 

カウンセリングに来ているクライエントさんの中でも、「カウンセリングに来る前に認知行動療法の本を買って一人で取り組んでました」「色んな本を買ったり、ネットで読んだりして考え方を治そうとしていました」という方は少なくありません。

 

でも、全く効果がないとまでは言わないものの、本を読んで取り組んでみても、あなたの考え方の癖はとれません。

 

それどころか、「せっかくやったのに何も変わらない私はやっぱり駄目だ!」と変われない自分を責めて、落ち込んでしまう。

 

あなたにもこんな経験はありませんか?

 

変わろうという思いを持ちながらも変われない自分と向き合うことは、とても辛くて苦しいことだと思います。

 

でも、専門家の私からすると、「本を読んでも変われない」というのはとてもノーマルなことで、そのことであなたがダメだなんて全く思いません。

 

だから、自分を責めないでください。

 

自暴自棄にならないでください。

 

大切なのは、「変わりたい」というあなたの強い思い。

 

まずはこれだけで十分なのです。

 

ここから、大切な話をしていきますね。


ネガティブ思考は、頭で理解するだけでは変わらない。

 

例えば、あなたが結婚式のスピーチを友人から頼まれたとします。

 

この時、あなたはそのことをどのように受け止めますか?

 

「絶対に失敗するに決まってる!」

 

「どうして私なんだろう。きっと、他の子たちに頼みづらいから、断らない私にしたんだろうな…」

 

ネガティブ思考の方にありがちな考え方の例を挙げてみました。

 

このような考え方をもっと前向きにして、楽に生活できるようになれたらいいですよね。

 

では、どう考えたらあなたの心の負担は軽くなりますか?

 

ここで読み進めるのを止めて、考えてみましょう。

答えはそんなに難しくはないですよね。

 

「友人代表のスピーチをお願いされるなんて、私はすごく大切に思われているんだな」

 

「うまく喋れなくたって大丈夫。彼女が喜んでくれるような話ができればそれで充分」

 

他にも色々とあると思いますが、ネガティブな考え方を前向きなものにしていくには、このように客観的に考え、書き出す習慣をつけていくと効果があります。

 

やってみると頭を使いますが、慣れればサクサク取り組むことはできます。

 

かなりざっくりとした例を挙げてみましたが、きっとあなたが手に取った本は、著者のそれぞれのやり方で、考え方を修正し、定着させていくための具体的な方法やプロセスなどを教えてくれるものであったと思います。

 

きっとどの本を読んでも勉強になるでしょうし、納得してやってみて、「あ、こう考えると楽なんだな」「明日からやってみよう」と思えた。

 

それから何日か本を読み返しては点検してみて、少しは楽になれることもあった。

 

でも

 

相変わらず、上司が不機嫌だと「私が何かやっちゃったんじゃないか」と思うし

 

逆に褒められると「きっと私が可哀そうだから無理やり励ましたに違いない」と思う。

 

なんだ、結局私って変われないじゃん。ダメじゃん。そうだよね、だって私だもん。

 

大体の方が、このようにして脱落(言葉が悪くてすいません)していくのではないでしょうか?

 

でも、繰り返しになりますが、これはとても普通のことで、落ち込む必要はありません。

 

なぜなら、「考え方の癖」は、頭で理解しただけで変わるような簡単なものではないからです。

あなたがネガティブ思考を変えようと思うこと。

 

それは、言ってみれば、プロ野球選手がバッティングフォームを大きく変えて、なおかつ試合で結果を出そうとするようなものです。

 

イチローのビデオを何度も見て頭で理解したとしても、それを自分のものにして結果を出すなんて、相当な時間が必要だということはわかりますよね?

 

頭でわかっていても、いざ打席に立つと、ついついこれまでの癖が出てしまう。

 

余計に混乱して打てなくなって、「自分には才能がない」「わかっているのに変えられないなんて情けない」と自分を責める。

 

本当に辛く苦しく、なおかつ孤独な取り組みであることがわかりますよね。

 

「ネガティブ思考を変える」こともこれと一緒です。

 

長い間、積み重ねて定着した習慣を変えることは、「これで大丈夫!」「もう心配いらない!」など、本のタイトルや帯に書いてあるような手軽なものでは決してないはずです。

 

それは言ってみれば、「相当に困難なミッションへのチャレンジ」であり、それなりの覚悟と勇気、そして根気強さが必要です。

 

そのミッションにたった一人で、本だけを頼りに挑むことが、どれだけ大変なことか。

 

だから、本を読んで取り組んでうまくいかないのは、むしろ普通のことなんですよ。


何度も点検する習慣作りが、「主観」を「客観」に変える。

 

では、実際にネガティブ思考の癖から抜け出し、より柔軟な考えを持てるようになるには、どうすれば良いでしょうか。

 

ここを説明していきますね。

 

先ほどの野球で例えれば、何度も自分のフォームをビデオで見て、「あー、変わってないな」「こうやって三振するんだよね」と理解を深めるのです。

 

もちろん、一人では気づけないこともたくさんあるでしょうから、打撃コーチと一緒に点検して、できることを一緒に考えていきます。

 

これと同じように、カウンセリングを受けている方は私と一緒に点検して自己理解を深めていくのです。

 

思考の癖の背景には、幼少期からの家族との関係、トラウマの問題、現在の環境や健康問題など、様々なことが絡み合っていることが多いので、ただ「思考」だけに絞ってアプローチをしてもうまくいかないことが多いんですよね。

 

クライエントさんのこれまでの人生をカウンセラーが十分に理解しながら、どのような支援が最も効果があるのかを一緒に考えさせて頂いています。

 

また、当たり前のことではありますが、カウンセリングでは、常にクライエントさんの気持ちを確認します。

  

「そこで上司に嫌われていると考えたことについて、何か理由はありますか?」

 

「そう考えたことで、どんな気持ちになりましたか?」

 

こういうやりとりを繰り返しながら、自分の本当の気持ちや、毎回陥りやすい考え方の癖、そしてその考えがどのように感情や身体、行動に影響し、更にそれがどのような結果につながったのか、などを点検していくのです。

 

大事なのは、この点検を繰り返すことです。

 

この習慣を作ることが、あなたに変化をもたらします。

 

「ランチに行ってくれる同僚は一人いますけど、課では女子が私と彼女だけなんですよ。だから彼女も、私と行きたくてランチに行ってるわけじゃないんです。私しかいないから、仕方なく私と行ってるんですよ」

 

例えば、カウンセリング当初はこのように語っていたクライエントさんが、カウンセリングを進めていくと、次のように変わります。

 

「昨日も後輩の女の子とランチに行きました。普通に楽しく話して気分転換になりましたけど、でも、彼女はそうじゃなかったんだろうなって。私なんかとランチに行ってつまんないだろうなって、私はどうしてもこう考えちゃうんですよね…

 

読んでいただくとわかると思いますが、ネガティブ思考は変わってません。

 

でも、ひとつだけ決定的に変わっていることがあります。

 

「彼女は仕方なく私とランチに行ってるんです」という主観(決めつけ、強い思いこみ)が

 

「私なんかとランチに行ってつまんないだろうなって、私はどうしてもこう考えちゃうんですよね…」と、客観的に自分を見れるようになるのです。 

「私なんて必要ないから」と本気で思いこむのと、「私なんて必要ないからと、どうしても思っちゃうんだよなー」と考えるのとでは、受けるストレスがだいぶ変わるというのはわかりますよね。

 

主観で一年過ごすのと、客観性をもって一年過ごすのとでは、人間関係も心身が受けるダメージもだいぶ変わるはずです。

 

このように、主観を客観に変えること、別の言い方をすれば、あなたの中に「ツッコミ役」を作ること。

 

あなたのネガティブ思考にツッコミを入れてくれるもう一人の自分を作れるだけでも、とても大きな変化なのです。

 

私は、これだけでも十分な成果だと思っています。

  

「ネガティブ思考を変えよう!」とハードルを上げるのではなく、まずはこの客観性を持つことを目標にすると、取り組みやすくてだいぶモチベーションが上がるはずです。


衝動性を減らし、自尊心が上がれば、考え方が変わる。

 

ここから更に説明していきますね。

 

例えば、「私はダメな人間だ!」と思いこんでいると、常に強い不安を抱えることになります。

 

そのため、相手の顔色が気になって断れなかったり、ついつい仕事をやりすぎてしまったり、行動のコントロールが効かなくなりますよね。

 

そんな毎日を送っていれば、当たり前ですが自分のことが惨めで仕方なくなり、余計に自信を無くしてよりネガティブになります。

 

この悪循環に陥っている人が多いのです。

 

でも、先ほど説明したように自分のことを客観視できるようになってくると、衝動的な行動が減っていきます。

 

「仕事を断ってはいけない!と僕は思いこんでいるんだよな」

 

「みんな、私のことなんてどうでもいいと思っているから話しかけてこないんだろうな……おっと、またこんな風に悪く考えてるよ。この間カウンセリングで言われたことを思い出さないと。これは私の思い込みであって、事実とは限らないんだよね」

 

このように客観性を持つことで、今までのように「すぐに仕事を引き受ける」「落ち込んでコミュニケーションをとらなくなる」などの行動を減らすことができるんですよね。

 

「急に山崎さんが頭の中に出てきて、私にそれじゃダメだよ!と言うんですよ」なんて言うクライエントさんも多いです。

 

カウンセリングを積み重ねることで、私が日常にお邪魔してツッコミを入れるみたいです。すいません(笑)

 

このような変化の中で、今までとは別の行動をとることにチャレンジする人もいます。

 

「今回は断ってみようかな」

 

「みんな仕事が忙しいだけかもしれないし、後で話しかけてみようかな」

 

こうやって、今までと違う行動をとった結果、それがうまくいった。 

「今日は忙しいから難しいです、と思い切って上司に断ってみたら、全然大丈夫でした!普段断らない僕が断ったから、むしろ上司に心配されちゃいましたよ。言ってみるものなんですね。僕が恐れていたようなことは何も起きませんでした」

 

「先輩に話しかけてみたら、普通に雑談してくれました。本当に私の思い込みなんですね。恐ろしいですねー」

 

こういう体験をすると、ネガティブ思考をやめることのメリットを、心から味わうことができるのです。

 

人間は、頭で考えるよりも、それが心から腑に落ちて納得できた時にこそ、行動が変わります。

 

「また次もやってみよう」というモチベーションが湧き、2度、3度と行動が続くのです。

 

衝動性に振り回されて行動していた時と違い、今度は自分の気持ちを大切に行動できるようになります。

 

その結果、自尊心が上がり、考え方も前のように凝り固まったものではなく、柔軟になっていくのです。

 

「私だってそれなりにがんばれてるし、忙しい時は断っても大丈夫」

 

「僕の意見はそんなに間違えてないみたいだから、もうちょっと発言してみようかな」

 

「まあ、うまくいかなくても大丈夫。なんとかなるよ。今までもそういうことはたくさんあったし」

 

こうやって、長年苦しめられたネガティブ思考から、少しずつ抜け出していく。

 

もちろん人それぞれプロセスや着地点は違いますけど、私のカウンセリングに来ているクライエントさんの、ネガティブ思考克服の一般的な流れはこのような形です。

 

少しでも良い方向に行くために大切なのは、とにかく自分と向き合い、点検を繰り返す習慣を作ることです。

 

諦めないで、とにかく続ける。

 

自分のことを見捨てずに、真剣に続けてみる。

 

泥臭くて大丈夫。うまくできなくても大丈夫。すぐに変われなくても大丈夫です。

 

繰り返しますが、大切なのは「変わりたい」と願うあなたの強い思い。

 

これだけを携えて、ぜひカウンセリングにお越しください!

 

いつでもお待ちしています。

 

※今回の私の話は、専門書を否定するものではありませんので、誤解なきようにお願いします。専門書は、取っ掛かりとしてはとても良いものなので、ぜひ色々と読んでみてください。