クライエントさんから頂いたご報告を紹介します。
「先月、仕事中に人事から呼ばれて話をしました。そこで、職場で私へのパワハラがあったということを会社が認めてくれて、初めてちゃんと謝罪されました」
「これまで、私が訴えてものらりくらりしていた会社には心底失望しています。謝罪の内容も腑に落ちないことが多々あるし、今も辞めたいという気持ちは変わらないです。でも、こうやって謝罪をしてもらえたのは、なんだか自分の中ではとても大きいです。前は今すぐ辞めたかったんですけど、もうちょっと居座らせてもらおうかなという思いになりました」
「今までの私なら、どうせ言ってもダメだろうとすぐに諦めていました。会社もそんな私に高を括っていたのはわかってました。でも、カウンセリングで何度も話をする中で、このままの自分じゃダメだ!謝ってほしいことははっきりと強く、何度も言おう!と思えました。本当に背中を押してもらい、がんばれました」
ご報告ありがとうございます。
この方は職場で深刻なパワハラ被害に遭い休職し、そのトラウマの問題でカウンセリングを受けてくださっています。
パワハラの詳細は省きますが、それはもう深刻で、聴いているこちらも辛くなるほどでした。
カウンセリングでは、主にトラウマ治療を中心に行いながら復職に向けたサポートを行い、職場の協力もあり3カ月前に復職しています。
あれだけのパワハラ被害を受けながら、復職を選択したのは本当にすごいことだと思います。
今のところ復帰して順調なんですが、このクライエントさんはひとつだけどうしても納得できないことがありました。
それは、「職場からパワハラについて正式に謝罪を受けていないこと」です。
職場は配置転換や業務の負荷を軽減するなどして一見とても協力的なんですが、肝心なパワハラの話になるとどうも逃げ腰で、ずっとのらりくらりとしているんですよね。
本人がパワハラのことで話したいと今の上司に訴えても
「人事には言ったんだけどね」
「今度言っとくよ」
「今は仕事のことだけ考えるといいよ」
こんな風に、休職中からどうも煮え切らないんですよ。
なんとなく、配置転換して、無事に復職させて、もうチャラにしようとしてないかな?とこっちも疑ってしまうような対応なんですよね。
クライエントさん本人も、「私がこういう性格だし、いつも遠慮がちに話すから、なんとなくなかったことにできると職場に思われている気がします」と話していました。
「こういう性格だから」というのは、この方はとにかく自分に自信が持てず、自己主張をすることがとても苦手なんですよ。
人に対して無力感が強くて、「どうせ言っても何も変わらない」「私が我慢すれば済む」と考えてしまう傾向が顕著です。
パワハラを受けても、不満を言葉や態度で表明するようなことはできず、ただただ耐えるだけだったようです。
だからこそ、より相手から軽んじられて被害が大きくなりやすいんですよね。
このクライエントさんには、カウンセリングでお話する度に、「自尊心」について考えてもらいました。
自尊心というのは、「どんな自分でありたいか」「どんな自分なら後悔しないか」という、自分を大切にする気持ちです。
無力感が強い人は、自尊心が低くなりがちです。
常に自分の気持ちは後回しで目の前の相手との関係を優先し、波風がたたないように振る舞います。
だから、嫌なことをイヤだと言わないし、自分の要求も相手に伝えられないのです。
その積み重ねが、「どうせ私なんて…」というさらなる自尊心の低さにつながり、人からも軽んじられやすくなります。
このクライエントさんは、自分の気持ちに焦点を当て続けた結果、職場に対してとても悲しんでいて、同時にとても不本意に感じていることに気づきました。
そして、
「このまま終わらせたくない」
「嫌な思いをさせられて休職までしたんだから、せめてちゃんと謝ってほしい」
「これを伝えたい。何も言わずに辞めるよりは、伝えて判断したい」
こう決意して、ついに行動に移せたのです。(行動に移さないとダメだと言いたいわけではありません)
「私はパワハラを受けて休職したと思っていますので、一ケ月以内に職場から明確な説明と謝罪が欲しいんです。一ヶ月待っても今のままなら、家族が職場に直接連絡すると言っています」
このように、上司にはっきりと伝えることができたそうです。
そしたらすぐに職場が対応してくれたようですから、やはり職場も高を括っていた可能性が高いですよね。
伝えられて本当に良かったです。
すごいです!
はっきりと自分の気持ちやスタンスを明確にして、相手に伝えること。
これが、自分の気持ちを大切にすることにつながるのです。
「何も言わないよりは、ちゃんと伝えた方がいい」
無力感が強い人は、こう思える経験を積み重ねることが本当に大切だなと感じます。
素晴らしいご報告、ありがとうございました!