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共依存を克服する方法①「相手の感情に振り回されない習慣作り」

 

昨今、「共依存」という言葉が広まり、「私は共依存ではないか」と心配になりカウンセリングに訪れる方がだいぶ増えた印象があります。

 

共依存の問題で苦しんでいる方は、当然ですが共依存を克服するための、または共依存から脱却するための具体的な方法を求めています。

 

あなたもそうではないでしょうか?

 

家族や恋人、職場や友人との人間関係でストレスが絶えず、どのようにして今の関係から抜け出すべきか、苦しみ、悩んでいますよね。

 

まず、共依存自体はこれまで培った人間関係の習慣であることが多く、習慣を直すことはたやすいことではありません。

 

だからこそ、習慣を変えていくための取り組みを、地道にコツコツと続けていく必要があるのですが、実際に何をどう始めてよいのか、わからないですよね?

 

ということで、今回から何回かに分けて、今すぐあなたが取り組むことができる「共依存を克服する方法」を紹介していきます。

 

読んで頂ければ、もしかしたらあなたが変わるためのひとつのきっかけとなるかもしれません。


「あの人を怒らせたのは、私が至らないからだ」と、相手の感情の責任を背負い、巻き込まれる。

 

「課長が怒っているのは、私が至らないからだ」

 

「私が、今夜は用事があって電話できないなんて言ったから、彼を怒らせてしまった」

  

「僕が公務員を目指すと言ったから父はとても機嫌が良かった」

 

共依存傾向の人の特徴として、「相手の感情の責任を背負う」ということが挙げられます。

 

「相手の感情の責任を背負う」というのは、自分の行動が相手の感情の原因だと思いこんでしまうことです。  

課長が怒っているのは、私が至らないからだ」

 

「私が至らない」というのが相手にとって刺激となった「自分の行動」です。

 

そして、「課長が怒っている」は、相手に生じた「感情」になります。

 

私が、今夜は用事があって電話できないなんて言ったから、彼を怒らせてしまった

  

僕が公務員を目指すと言ったから、父はとても機嫌が良かった

 

繰り返しますが、共依存の人は、「自分の行動」「相手の感情」の直接の原因だと思いこんでしまいます。

 

「それのどこがおかしいの?だって、私の働きぶりが至らないんだから、課長を怒らせたのは私ですよね?だから、怒りの原因は私ですよ」と思ったあなたは、その考えをまず見直してみてほしいです。

 

なぜなら、部下の働きぶりが悪かったとしても、全ての人に必ず「怒り」が生じるわけではありません。

 

「心配」に思って優しく声をかける人もいれば、「不安」になってより手厚い指導をする人もいるかもしれません。

 

彼女に「今夜は用事があるから電話できない」と言われた場合も同様です。

 

全ての人が必ず怒ると思いますか?

 

そんなはずはありませんよね。

 

「怒り」という感情が生じた背景には、その人の性格的な特徴や考え方、またその時の本人を取り巻く環境や心身のコンディションなども大きく関係しているわけで、あなたの行動はただのきっかけでしかないのです。

 

これがよくわからずに、相手の感情の責任を背負うことが習慣化していると、罪悪感を持ちやすく、相手に巻き込まれて人間関係に様々なストレスが生じやすくなります。

 

以下、ありがちな問題を挙げてみます。

 

▶過剰に相手の顔色を窺って、自分がどうしたいかよりもどうするべきかばかり考えて行動する。

 

▶相手が不機嫌だと、自分が何かしてしまったと思いこんで不安になる。

 

▶パワハラやDV、モラハラの被害に遭いやすい(相手にとってはコントロールしやすい)。

 

▶家族、職場、友人や恋人など、どの人間関係においても、人から軽んじられてしまう。

 

▶嫌なことをされても断ることができず、常に人間関係で我慢をしてしまう。

 

▶「相手が喜ぶこと」が「自分の望んでいること」であると本気で思いこみ、本当は自分がどうしたいのかがよくわからない。

 

あなたにもこんな傾向はありませんか?

 

そんなあなたは、まずは「相手の感情の責任」があなた自身にあるわけではないことを自覚することから始めましょう。


「感情」の裏側には、必ず「ニーズ」がある。

 

では、相手の感情の責任を背負わない習慣を作るためにはどうしたら良いのでしょうか。

 

詳しく説明していきますね。

 

まず、覚えてほしいことは、「感情」の裏側には必ず「ニーズ」があるということです。 

例えば、ディズニーランドが好きな子どもが、ディズニーランドに連れて行ってもらえるとわかり「嬉しい!」と感じる。

 

これは「ディズニーランドに行きたい」というニーズが満たされたことで「嬉しい」という感情が生じたわけです。

 

また、「今日は残業をしないで早く帰りたい」と思っていたら、上司に仕事を振られてしまいとてもイライラする。

 

これは「早く帰りたい」というニーズが満たされなかったことで「イライラ」の感情が生じたことになります。

 

つまり、私たちに生じる様々な感情には、必ずその人のニーズが強く関係しているのです。

 

相手の感情の責任を背負わず、うまく距離をとるポイントは、この感情の裏側にある「ニーズ」に焦点をあてること。

 

ここが大切なポイントになります。


ポイントは、相手の「感情」よりも「ニーズ」を見ること。

 

課長はわかりやすい報告を望んでいるが、私の報告が長いので不満に思っている」

 

緑(自分の行動)赤(感情)以外に、「ニーズ」を加えてみました。

 

これは、自分の行動により、相手のニーズが満たされなかったことが原因で、感情が生じているという捉え方です。

 

先ほどの「課長が怒っているのは、私が至らないからだ」とは違い、自分の行動はただのきっかけであり、相手の感情の原因ではないと捉えることができるので、相手の感情に巻き込まれずに距離をとることができます。

他のセリフもニーズを含めて作り直してみます。

 

私が、今夜は用事があって電話できないなんて言ったから、彼を怒らせてしまった

私が、今夜は用事があって電話ができないと伝えたら、私に仕事の愚痴を聴いてほしかった彼は怒ってしまった

 

僕が公務員を目指すと言ったから、父はとても機嫌が良かった

僕が公務員を目指すと言った父はとても機嫌が良かった父はずっと、僕に安定した職業についてほしいと思っていたから」

 

どうですか?

 

どちらの方が、人間関係のストレスが減ると思いますか?

 

彼を怒らせたのはあなたではない。

 

仕事の愚痴を聴いてほしかった彼が、それができないことが不満で、ニーズが満たされずに自分で怒ったのです。

 

お父さんを喜ばせたのはあなたではない。

 

子どもに安定した職に就くことを望んでいた父が、あなたが公務員を目指すと知って安心して、ニーズが満たされて機嫌が良くなったのです。 

 

ちょっと難しいですよね。

 

セミナーなどでこの話をすると、初めは皆さん軽く混乱しますから、すぐにわからなくても大丈夫です。

 

お勧めしたい取り組みは、「私が相手を怒らせてしまった」と感じたら、まずそれを紙に書き出してみましょう。

 

そして、「自分の行動」と「感情」に、「相手のニーズ」も加えてみる。 

 

共依存を克服するには、こういう地道な積み重ねが大切です。

 

習慣を変えるのは大変ですから、何度も何度も点検し、まずはその点検を習慣にしましょう。

 

相手の感情だけでなくニーズにも焦点を当てるだけで、相手に巻き込まれない、安全な距離感を保つことができます。

 

それにより、今よりも確実にストレスが減り、人間関係が楽になりますよ。

 

できるところから始めてみてください。

 

最後にひとつだけ、注意してほしいことをお伝えします。

 

「相手の感情の責任を背負わない」ということは、決して「相手の気持ちを尊重しない」ということではありません。

 

相手を傷つける発言をして相手が怒った場合、「あなたが怒っているのはあなたのニーズが満たされないからでしょ?私の責任ではないからね」と相手の人間性への敬意を欠くコミュニケーションは、ただの「暴力」です。

 

きちんと相手の人間性を尊重し、敬意を払う気持ちを忘れないこと。

 

でも、相手の感情の責任までは背負わないこと。

 

これが安全な人間関係を構築するための大前提です。