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不登校の子が、学校に行こうとすると「お腹が痛くなる理由」

 

2018年に文部科学省が行った調査では、年間30日以上欠席している不登校の状態にある中学生は全国に約10万人、他の団体の調査では「不登校傾向」の中学生は推計約33万人に上ると言われています。

 

私は学校でもカウンセリングをしているので不登校の相談を受けることは非常に多いのですが、最近は学校以外でも、共依存や健康問題でカウンセリングに来るクライエントさんから「実はうちの子が学校に行ってないんです」と相談されることが増えています。

 

そんな、お子さんの問題で頭を悩ます方から特に多く頂く質問。

 

「子どもが朝学校に行こうとするとお腹が痛くなるんです。吐き気がするという日もあります。腹痛や吐き気はどうして起きるんですか?」

 

これについて解説します。

 

まず、不登校の問題を、なぜ「共依存を克服するブログ」の記事に含めるのかということをお伝えしておきますね。

 

それは、「不登校の問題の背景に親の共依存の問題が強く関連していること」がとても多いからです。

 

お子さんの不登校の問題で悩む方は、ぜひ読んでみてください。 


中2の娘が学校に行きません…

 

娘が学校に行ってないんです。

 

夏休みが終わる一週間くらい前から、「変な夢を見る」とか「眠れない」とか言い出し、ちょっと様子がおかしかったんです。

 

それで、夏休みが終わって、二学期の始まりの朝。

 

あの日からです。

 

「お腹が痛い」と言うんです。

 

辛そうな顔をして、トイレに入って出てこなくて。

 

結局その日は遅れていかせようとしたんですが、なかなか治らなくて。

 

学校を休むことになるとあんまり訴えなくなるし、良くなるというか。

 

夜には「明日は行けそう」と明るく言うんです。

 

でも、ダメですね。翌朝起きると、またお腹が痛いって。

 

病院に行ってもお腹の薬をもらうだけ。

 

「精神的なものが大きい」と先生が言うので、だったら学校に行けるだろうと。

 

一回、車で校門の前まで連れて行ったんですよ。

 

そしたら、石のように硬まっちゃって。

 

反応が全くなくなっちゃって。

 

あれには驚きました。

 

本当にどうすればいいのかわからなくて。

 

そもそも、なんでお腹が痛くなるんですかね。

 

どうしたらお腹が痛いのが治るんでしょうか?

あなたもこのような問題で困っていませんか? 

 

こんな悩みを抱える保護者の方は、毎日毎日本当に苦しい思いをして過ごしています。 

 

金曜の夜にはミュージックステーションを見て乃木坂について妹に熱く語っていたし、週末ショッピングモールに連れて行ったら楽しそうに買い物してた。

 

それだけ調子が良さそうだし、来週からは行けるんじゃないかな、と何度期待したことか。 

 

こちらの期待が大きければ大きいほど、朝の落胆は大きい。 

 

落胆というより、途方に暮れるような、絶望や苛立ちなど、色んな感情に襲われますよね。 

 

本当に大変な中、親であるあなたも頑張っていると思います。 

 

今日は、そんなあなたにお子さんの「お腹が痛くなる理由」を説明していきます。


感情を抑圧する習慣が、身体と行動に及ぼす影響とは?

 

私がよくセミナーやカウンセリングなどで説明することなのですが、 

 

「思考」と「感情」のバランスを理解することで、「お腹が痛くなる理由」を理解できるのではないかと思います。

 

「辛い」「悲しい」「嫌だ」「さみしい」「怒り」「嬉しい」「楽しい」「ワクワク」

 

これらが全て「感情」だというのはわかりますでしょうか。

 

「仕事がいや」「上司が怖い」「旦那のあの態度にはいつも腹が立つ」

 

あなたが何かにストレスを感じている時、そこにネガティブな感情が伴っていることが多いはずです。

 

でも、この感情にのみ従って行動を起こしてしまうと、人間関係や社会生活がうまくいかなくなります。

 

当然ですが、イヤでも仕事にいく必要はありますし、怖くても上司は選べないですよね。

 

「仕事を休むわけにはいかないし、行かなきゃ」「怖いけど、がんばろう」

 

こうやって、適切な行動をとるために、頭で考えます。

 

これが「思考」です。

 

「嫌だな!」(感情) ⇔ 「仕事行かなきゃ!」(思考)

(今回は手書きの画像を多く出しますが、字が汚くてすいません)

 

感情と思考のせめぎ合い

 

これが葛藤なのです。

 

この葛藤は、とても大切なものです。

 

葛藤するということは、自分の感情を受け入れているからこそできるものです。

 

「今日も課長が怖かったなー」と認めると、自分がそれだけストレスを受けたと認識できることになりますよね。

 

そうやって、自分が「苦痛を味わった」、「ストレスを受けた」と認めることができれば、人間はきちんと自分を癒す意識を持ちやすくなります。

 

「今日は頑張ったからお酒でも飲んで帰ろうかな」「友達にLINEして愚痴を聴いてもらおう」「週末はマッサージにでも行こう!」

 

こうやって、「辛い」を認めるから、「嬉しい、楽、安心安全」などのポジティブな感情を増やして自分を癒そうとするのです。

 

だから、自分の感情をきちんと認められる人は、自分を癒す行動をとる意識を日常的に持つようになります。

 

結果として、ストレスをそこまで溜め込みづらく、健康を維持しやすいのです。

 

でも、日本人は意外とこれが苦手です。

 

「乗り越える」とか、「耐え忍ぶ」とか、精神論を好む傾向があります。

 

それは、先ほどのように思考と感情が横になって対等な関係でバランスをとるのではなく

 

上下の関係にしやすいのです。

これは、感情を思考で抑圧してしまうパターンです。

 

頭で考えて自分に言い聞かせて(納得させて)、感情を抑え込んでしまうのです。

 

「辛い」と思っても、「これくらい普通」

 

「怒り」を感じても「これくらいで怒るなんて私の我慢が足りない」

 

こんな風に、ノーマルな感情を認めないことになります。

  

感情を認めないということは、先ほど説明したように、ネガティブな感情を自ら癒す意識も持ちづらくなります。

 

そうすると、癒されない感情がどんどんあなたの身体に蓄積していきます。

思考が漬物石のように、感情を押しつぶす。

 

そこで、癒されない感情が溜まっていく。

 

この蓄積する「癒されない感情」が危険なのです。

 

これが色々と悪さをします。

 

本来は、「いやだよー」「辛かった」と感情として出てくるべきものが、冷凍保存されて地の底に降りていく。

 

ぷよぷよみたいに、消せなくてどんどんどんどんたまっていくのです。

あくまでイメージですが、左は思考と感情のバランスが取れている人。

 

右は感情を思考で抑えつけている人。

 

イヤだ、辛い、悲しいなどのぷよぷよが今にも溢れんばかり。

 

では、どうなるか。

癒されない感情が漬物石をくぐりぬけ、ガスのように外に漏れ出る。

 

これが、主に「身体」と「行動」に影響するのです。

 

例えば、

 

●身体

 

頭痛、吐き気、胃痛、腹痛、だるい、慢性的な体調不良、微熱が続く、休日になると熱が出る、動悸や発作など。

 

●行動

 

お酒、買い物、食事、スマホやゲームなどの行動をコントロールできない。

 

イヤな仕事を後回しにして手が付けられない。

 

ミスが増える、忘れっぽくなる、仕事に行かなくなる、などなど。

  

あとは、当然ですが慢性的に感情が癒されていないわけですから、落ち込みやすかったり、気分の浮き沈みは激しくなったりします。

 

急に悲しくなったり、キレてしまったり。

 

また、蓄積した感情が収まり切れなくなり、漬物石をふっ飛ばすほどに爆発すると、「急にキレる」など衝動的な行動をしてしまいます。

 

こうやって、自分の気持ちや行動がコントロールできないし、なんだか体調が悪いし。 

 

そんな状態がずっと続きやすくなるのです。 

 

私は精神科でもカウンセラーとして勤めていますが、精神科を受診する人は、気分の落ち込みだけでなく、体調不良が改善しないことで来院する方が意外と多いのです。

 

「会社に行こうとするとなぜか起きられない」「ずっと体調不良が改善しない」

 

このような問題があり、内科などの病院に行っても良くならず、検査をしたけど異常なし。

 

最後は先生から「ストレスかもしれないから精神科に行きませんか?」と言われて精神科を受診するという流れです。

 

「感情を抑圧する習慣がつくと、身体に出やすい」ということを説明しておりますが、 ここまでご理解頂いておりますでしょうか。

 

長々と書いておりますが、ここで前半終了です。


「お腹が痛い」の正体は、抑圧してもしきれないほどの強い感情である!

 

ここからがようやく本題です。 

 

なぜ、あなたのお子さんは朝学校に行こうとするとお腹が痛くなるのか。 

 

そして、学校の前まで連れて行くと固まって車から降りられないのか。 

 

説明していきます。 

 

例えば、皆さんが明日、毎日のように死者が出る紛争地に行くことになります。 

 

そこに行けば、はっきり言って命の保証がありません。 

 

でも、行かないといけません。 

 

なぜなら、「行くことになっているから」「みんな行っているから」です。 

 

行かないと、みんなに「おかしい」「ずるい」と言われてしまうからです。 

 

明日は6時半に起きて、ご飯を食べ、顔を洗い、荷物を持って飛行場まで行かなければいけません。 

 

8時30分までには受付をする必要があります。 

 

前日の夜は、怖くて怖くて一睡もできませんでした。 

 

朝を迎え「行かなきゃ」「がんばらなきゃ」と自分に言い聞かせます。 

 

心臓はドキドキドキドキ。 

 

胸が苦しくて、食事も喉を通りません。 

 

それでも、なんとか支度をし、さあ出発!と思ったその時。 

 

お腹が痛い!! 

 

本当に痛い。 

 

「お腹痛いの?それなら、車で送っていってあげるから。大丈夫だから。行くだけ言ってみようよ」 

 

あなたの家族が車で飛行場まで送ってくれました。 

 

さあ、あとは車から降りて、紛争地域に向かう飛行機に乗り込むだけです。 

 

「さあ、おりて」「大丈夫だから」 

 

あなたの体は石のように硬くなってしまいました。 

 

手も足も動きません。 

 

「どうしたの?」「ちょっと!いい加減にしなさいよ?今日は絶対に行くって約束でしょ?」 

 

何やら家族があなたにイラついています。 

 

早く車から降りてほしいようです。 

 

でも、その声もあなたにはきちんと入ってきません。

さて、ちょっと極端な例えになりましたが、どうしてお子さんのお腹が痛くなるのか、なんとなく理解できる感覚がつかめましたでしょうか。 

 

単純ですよね。

 

怖いからです。

 

イヤでイヤで仕方がないからです。 

 

「大丈夫だから!」と言われても、安全を感じることができないのです。

 

子どもなりに、「行かなきゃ」と一生懸命に自分に言い聞かせていても、辛い方の感情があまりにも強いと、身体と行動に影響します。 

 

「怖いよー」「いやだよー」と叫べたら楽ですけど、行かないといけないわけですから、そのためには感情を抑圧するしかない状態になります。 

 

漬物石で「怖い」「嫌だ」を押さえつける。 

 

でも、強い恐怖や不安はおさまりません。

 

そして、いざ出陣!となると恐怖や不安はピークを向かえます。 (自分の感情を自覚していないことも多々あります)

 

こうして、朝になるとお腹が痛くなるし、学校の前まで送っていくと硬直する、という問題が起きます。 

 

「いくらなんでも戦争で例えるのは極端じゃないですか?」と思うかもしれませんが、

 

できるだけそのような考えを改めて頂くことをお願いしたいです。

 

なぜなら、「大げさ」と親が思えば思うほど、子どもは「おかしいのは私」「言ったってお母さんはわかってくれないから」とますます自分の感情を抑圧してしまいやすくもあるのです。

 

大切なのは、「それくらい怖い思いをしているんだ」と、子どもの目線で考えてあげることです。

 

不登校を解決するために、「子どもの気持ちを理解すること」は欠かせないことなのです。 

 

これが本当に大切で、最後にこの話をしますね。


「共感」が苦手だと、ついつい子どもに正論や経験談を押し付けてしまう。

 

思考と感情のバランスなどの話を聴いて、親であるあなた自身は、ご自分のことについて何か気づくことはありませんでしたか。

 

と言うのも、私がこの話をすると、「それって私のことですよ」と語る親御さんがとても多いのです。

 

あなた自身は「怖い」「不安」「辛い」「悲しい」などというご自分に生じる感情について、把握することはできますか。

 

また、その時々で感じる感情の強さについて、点数をつけることはできますでしょうか。

 

あなた自身が、「母親なんだからこれくらいで辛いなんて言っちゃいけない」とか「私は仕事してないんだから、夫に腹を立ててはいけない」のように、自分の感情を抑圧して生きているとしたら

 

お子さんの不登校を解決するために、まずは「あなた自身が、抑圧せずに自分の感情を扱えるようになること」

 

このための取り組みをすることをお勧めしたいです。

 

なぜなら、感情を抑圧していると自分の気持ちがよくわからなくなり、結果として「人の気持ちがわからなくなる」からです。

 

つまり、悩んでいる子どもの気持ちを汲み取り、共感することが苦手になってしまいます。

 

共感ができないということは、どうしても正論や経験談などの理詰めの対応に偏ってしまうものです。

 

言い換えると、お子さんを「正そう」という意識で関わることになります。

 

「クラスにいじめる子なんていないでしょ?」

 

「先生が助けてくれるって言ってるんだから、大丈夫だから」

 

「お腹痛いのは病気じゃないって先生が言ってるんだから」

 

「お母さんもそういう時あったけど、〇〇して乗り越えたな」

 

「いい加減にしなさい!」

 

このようなパターンで親子のコミュニケーションがうまくいかず、お互いに苦しい思いをしている関係がとても多いなという印象を受けます。

 

ちなみに、共感はいわゆる「傾聴」などのテクニックだけではできません。

 

相手の気持ちを想像できることが大前提で、その上での「傾聴」です。

 

不登校などの問題で専門家や支援機関などに相談をする保護者の方は、「もっとお子さんの気持ちに寄り添って」という助言を受けることは少なくないと思うのですが、共感力がなければ「気持ちに寄り添う」ことなんてできません。

 

だからこそ、子どものことだけでなく、親が自分のことを理解することもとても大切になってくるのです。

 

※参考記事

▶子どもにすぐにキレて怒鳴ってしまい、自己嫌悪で苦しむあなたに知ってほしい「怒りの本当の理由」

▶「これって過干渉?」子どもへの過干渉をやめたいけどやめられない方に知ってほしいこと。

▶「子どもの気持ちに寄り添うってどういうこと?」誤解されやすい「気持ちに寄り添う」の本当の意味と、共感力を養う方法。 


まとめ

 

ということで、だいぶ長くなったのでここまでの話をまとめます。

 

①感情を抑圧すると、身体や行動に出る。

 

②「お腹が痛い」のは、学校に安全を感じていないから。

 

③親自身が感情を抑圧していると、子どもに共感できないので正論や経験談ばかり話してしまう。 

 

④結果、子どもが心を閉ざし、ますます感情を抑圧する。「お腹が痛い」がいつまでも続く。

 

こういう話を私は保護者の方にすることが多いです。 

 

これで、「子どもの問題」だと思って悩んでいた親御さんのベクトルが、初めて自分に向くことになります。

 

「もしかして、私の問題でもあるの?」

 

「確かに、私も子どもの頃から親に話を聴いてもらっていません」とか。 

 

ここで、幼少期の家庭環境などの話になり、結果、自分に共依存の傾向があることに気づく方は少なくありません。

 

そして、お子さんの問題と同時に、ご自分の共依存の問題も一緒に整理し取り組んでいくのです。

 

「自分の気持ちを大事にするようにしてから、娘の話をちゃんと聴けるようになりました」

 

「私が前のようにカリカリしなくなってから、子どもがリビングで過ごす時間が増えて、『暇だ』と言って友達と会うようになりました。学校に行きたいようなことも言っています」

 

このように、親が変わることで子どもが変わることも少なくないのです。

 

ちなみに、私は「不登校の子どもの親は必ず問題があり共依存です」と言いたいわけではありません。

 

ただ、不登校をお子さん個人の問題にしてしまうと、大切なことに気づけず、結果として問題が長期化してしまうことがあることを伝えたいです。

 

共依存の問題だけでなく、夫婦関係など、背景に様々な家族の問題があることが隠れていることが多いのです。

 

だから、一度立ち止まって、不登校の問題の本質とじっくりと向き合ってみること。

 

背景にどのような問題があるのか、自分と子ども、家族の関係をゆっくりと振り返ってみることが、不登校を解決する近道でもあるのです。

 

今すぐにお子さんを変えたい気持ちはとてもよくわかります。

 

ただ、もう少し頑張って、立ち止まって、やり方を変えてみませんか。

 

そのために、一度カウンセリングを受けてみることをお勧めします。

 

精一杯お手伝いをさせて頂きますので、いつでもお気軽にご連絡ください。