「この一年、社長からパワハラを受けてます。すごく傷つけられて、本当に苦しくて。でも、会社に入れてくれたのは社長だし、本当に助けてもらえたし、すごくお世話になったんです。だから、パワハラは辛いんですけど、悪くは言いたくなくて…。お世話になった人を嫌いになるなんて、失礼だし良くないですよね?」
カウンセリングでこんなお話を聴くことが続いたので、今回ブログで私の感じることを書いてみます。
お世話になった人や好きな人から傷つけられる。
こんな経験は大なり小なり、誰にでもあるのではないでしょうか。
社長がいたから今の私がいるし
私が、実家の親の問題で疲れて困っている時に「最近疲れてない?大丈夫?」と気付いて声をかけてくれたのも社長だし
誰にも言えなかった実家の問題を初めて打ち明けて、親身に聴いてくれたのも社長
社長には本当に感謝してる。
間違いない。
でも、社長の当たりがきつくなってきたのはこの一年くらい。
原因はよくわからない。
会議の後にメールがきて、「さっきのあの発言、どういう意味?」と聞いてきて、
私が返信して説明すると「何わけわかんないこと言ってんの?」「根拠はなに?」とか。
毎回こっちに説明させて、ひどい言葉でダメ出しして
その連続。
正直、もう会議が来るたびに怖くって。
また何か言われるんじゃないかって。
その度にすごく時間とられるし。
仲のいい友達にこのことを話したら「ひどいパワハラだ!」とすごく怒って
会社を辞めた方がいいとか、今すぐ職場の頼れる人に相談した方がいいと言ってくれて。
でも、会社の人には社長のことは話せない。
お世話になった社長を悪く言うなんてよくないと思って。
だって、私がいるのは社長のおかげだもん。
イヤだなんて思うのは良くないよ。
今?
話してて、なんだか胸が苦しいかな。
モヤモヤというか、ギュッーっとなるというか…
「イヤだ」という感情は、あなたを守るためにある。
「本当は実家に帰りたくないんだけど、育ててくれた母親のことをイヤだなんて思ってはいけない」とか
「彼のことは好きで、ちゃんと付き合おうと決めたんだから、こんな小さなことで嫌いになんてなってはいけない」とか
相手を好意的に捉える気持ちとそうではない気持ちをどうしていいのかわからず、
私の気持ちは、こうであるべきだ!と頭で決めつけてしまう。
もしあなたがそれを習慣としているなら、あなたはこれまでに人間関係で本当に本当に我慢を重ね、もしかしたら深い傷を負っていることすらちゃんと気づけていないのではないかなと、私はとても心配に思います。
あなたが「感じてはいけない!」と頑張って規制をかけている相手への嫌悪や怒り、恐怖などの負の感情
これらは、私たちが自分のことを大切にするために、どれも大事にした方がいい感情なんですよ。
当たり前ですが、イヤなものにはできるだけ近づかない方が、よりストレスは減りますよね。
イヤな仕事をついつい後回しにするのも、「今はストレスを感じたくない」という気持ちからです。
今を安心安全に、今をより心地よく
これって、人間なら当然のノーマルな気持ちだと私は思うんです。
このイヤな気持ちにちゃんと気づいているからこそ、ストレスを減らすために、相手との関係を考えるんですよね。
どんな感じで付き合えばストレスは減るかなー、と。
私なら、イヤな相手ならすぐにメールを返さないとか、その人がいる飲み会にはできるだけいかないとか、やめてほしいことをきちんと伝えるとかして、ストレスを減らそうとしますね。
相手が上司で、言ってもわかってくれなそうなら、色んな人に相談して、解決できなければ(問題の大きさによりますが)辞めることも選択肢にけっこう悩むと思います。
まあ、ここまではそんなに難しいことではないですよね。
でも、今のあなたが悩んでいるのは、単純にイヤな気持ちを受け入れられないということだけではない。
お世話になった人
好きな人
感謝している人
そんな人に対して嫌だと思ったり、腹を立てたりすること。
そんな2つの相反する気持ちの正しい扱い方がよくわらずに、苦しんでいるんですよね。
そんなあなたが今よりも楽に生きるために、相反する2つの気持ちとの付き合い方を説明しますね。
「好きだけど嫌い」を自分に許す。
あなたは、「感謝してる人のことを嫌いになるなんておかしい!」と一生懸命に自分に言い聞かせています。
でも、そんなあなたに伝えたいです。
「好き」だけど「嫌い」という両方の気持ちがあることって、実は全くダメなことではないんですよ。
「社長にはお世話になったし心から感謝してるけど、嫌いだ」
「お母さんは女手一つで私と弟を育ててくれて、尊敬してる。でも、会うのが怖い。今は会いたくない」
「彼のことは好き。でも、私がLINEを返すのが遅れたくらいで不機嫌になるところは、本当にイヤ」
これでいいんです。
人間の気持ちって、好きか嫌いかの二択で済むほど、単純なものではないんですよ。
だから、両方をそのまま認めてあげてほしい。
好きだけど嫌いな自分を許してあげてほしいです。
カウンセリングを受けてくださっているクライエントさんで、私がこのことを伝えたら「本当にいいんですか?」と涙を流した方がいます。
イヤなのにイヤだと言えないのは、本当に辛かったと思います。
これまで本当に、よく頑張ったと思います。
でも、もう頑張らなくていいのです。
イヤな気持ちをありのままに認めるだけで、心の傷は少しずつ癒されていきますよ。
さて、もしあなたが今も辛く苦しい人間関係で悩んでいるとしたら、ぜひ一度カウンセリングを受けて原因から整理してみることをお勧めしたいです。
例えば、幼少期の家庭環境。
あなたは学校であった嫌なことや、悩みごとを家でちゃんと話してきましたか?
「友達に靴を隠された!」
「今度のピアノの先生、なんか怖い…」
こんな話を当たり前に家でしてきましたか?
自分の気持ちを親に伝えて、関心を持って聴いてもらえて、共感される。
「靴隠されたの?本当に?それはお母さんも辛い。それでどうなったの?」
「確かに、今度の先生ちょっと厳しそうだよね。どんな風に怖いの?」
「大変だったね。よく頑張ったね」
こういう経験の積み重ねで、自分の気持ちをありのままに受け入れ、認められるようになります。
だから、「好きだけど嫌い」を認められるのです。
一方で、親から気持ちを受け入れてもらえなかったら
「靴?隠されたんじゃなくて、無くしたんでしょ?!今忙しいんだから、イライラさせないで!」
「先生のことを悪く言っちゃいけません!」
子どもは自分の気持ちを受け入れてもらえる場所がないと、感情を抑圧するようになります。
「どうせ私が悪いんだ」
「言ったって誰もわかってくれないし」
「私さえ我慢すればいいんだから」
そうやって、気持ちを抑圧して、自分を責めて、全て一人で抱え込む癖がつく。
気持ちを人に共有せず、共感も肯定もされていないわけですから、自分の気持ちを自分で肯定するのは困難になります。
その結果、「嫌いになんてなる私がおかしい」「普通はお世話になった人をイヤだなんて思わない」と自分の感情に規制をかけてしまうのです。
これはあくまでも1つの例ですが、あなたの今の苦しみの原因は、そんなところから来ているのかもしれません。
このように幼少期の頃からの自分を振り返ることは、あなたの癒されていない傷を点検し、癒していくことでもあります。
自分のことを客観的に振り返ると、「私ってダメな人間だと思ってたけど、子どもの頃からけっこう頑張って耐えてきたんだなって思えます」と、自分に対する見方が大きく変わる人も多いですよ。
あなたはこれまで、本当に一人でよく頑張ってきました。
だからこそ、今度は人を頼ること、そして人に気持ちを共有することのメリットを学んでください。
いつでもお手伝いをさせて頂きます。